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天使

「・・・つーくん! 大丈夫? つーくん?」 遠くの方で、声が聞こえる。 これは、ウーか・・・? 外国の生活に中々馴染めなかったオレを、天使がいつも慰めてくれていた。 親に、怒られた時も、怖いテレビを見た時も、三人で居れば怖く無かった。 ああ、これは翼の記憶か・・・ そう、認識したのと同時に翼は目を覚ました。 どうやら、ここはウォルフが泊っているホテルのベットの上らしい・・・。 その隣には、心配そうに見つめる金髪の元天使。 今はもう、可愛い天使とは言えないのに、翼には相変わらず可愛い存在だった。 「ウォルフ、ありがとう。 僕は大丈夫だよ。」 そう言って、ウォルフの頭を撫でた。 「・・・翼・・・」 撫でていた、翼の手をウォルフは捕まえて、口元に持っていった そのまま、指先にkissを落として、翼に尋ねた・・・ 「翼・・・、君は誰だい?」 「え・・・?」 咄嗟に掴まれていた手を引っ込めようとするが、ウォルフに力で勝てるはずもなく手が握られたままになった。 「翼が気を失ってた間、翼はずっと『こんなの知らない』って言ってた・・・。 ここは『ゲーム』の世界だとも・・・」 背中を冷たい汗がつたう 二人の間に緊張が走る 先に、口を開いたのはウォルフだった。 「・・・翼、君にも別の人格が居るの?」 翼・・・いや、誠も予想だにしてなかった事をウォルフに聞かれたのだった。 「な、なんで・・・?」 なんで、ウォルフが・・・ ウォルフは戸惑っている翼に構わず続けていった。 「ねぇ・・・翼。 教えて、僕はそのゲームには出てくるのか?」 そうウォルフに問われて、翼はハッとする・・・。 もしかして・・・ウォルフは・・・? 「・・・ウォルフは、僕の知ってるゲームには出てきてない・・・。」 「そう。 それで、君は誰?」 翼の言った事にも驚くでも、心配するでもなく淡々と事実の様に話を聞いたウォルフに、翼は自分が転生者で有る事を告げた。 そして、自分の記憶の中のストーリーと今の現状が違う事をウォルフに伝えたのだった。 「そっか、翼は『坂本 誠』っていう子の記憶があるんだね・・・。」 口元に手をやり、ウォルフが少し考えて言った。 「ウォルフ・・・、急にこんな事言ったら頭のオカシイ奴だと思うかも知れないけど・・・。本当にオレ・・・。」 いつの間にか両手は、詰めが食い込む位握りこまれていた。 その手に、相馬とも劣らない位大きない手が重なった。 「安心して、つーくん・・・誠が腐男子でも僕は何も変わらないで、味方だよ。」 にっこりと微笑まれて一瞬翼は何を言われたのか理解出来なかった・・・ 「え・・・オレ・・。腐男子って・・・え?」 まさか・・・ウォルフも、転生者????

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