115 / 208

VS 相馬 (相馬→莉緒)

田中に呼ばれあの場を離れたが、翼をあの男の腕の中に残して本当はあの場から離れたくは無かった。 自分の浅はかな行動が悔やまれる。 翼が近くに居る事をしって思わず声を掛けてしまったのが間違いだった。 私室で、報告書を眺めながら相馬は翼と会った時の事を思い出していた。 莉緒が、まさか病室を抜け出すとは思わなかったのだ。 恭二が部屋の前に現れた日の夜、莉緒を転院させここに連れて来たのだが・・・ その時には、既に禁断症状が出始めていた。  田中には、莉緒に刺さっていた点滴、飲んでいた薬、恭一がリオに飲ませていた水筒を調べさせていた。結果どれからも、微量の薬物が出てきた。 この薬物は、気分が高揚し気持ちが大きくなったりする、常用し続けると、自分で考える事が出来なくなる・・・そんな薬物が微量ながら含まれていた。 長年、リオはその薬物を摂取していたと、髪の毛の成分から結果が出た。 させられていたのか・・・していたのか・・・。 何方にせよ、今回の事で青桐は八月朔日を切る事を決めていた。 その事は既に、青桐家当主の祖父には伝えていた。 まさか、薬物が絡んでくるとは思わなかったが・・・。 しかし、あの男・・・翼とは一体どういう関係なんだ? 翼は、あの男を『ウー』と呼び、頬にキスする事を許していた。 自分とは出来ないと言っていた事を、他の男が目の前で・・・・。 バキっ 思わず手にしていたボールペンが折れる。 報告書には写真付きで、あの男の情報があったが翼との関係は書かれていなかった。 この男と争うには、今の自分では勝てないだろう。 けれど、一歩も引く気は無かった。 莉緒に対して湧かなかった感情 それが、翼に対しては抑えきれない位感じている 翼が、他の男のモノになるくらいなら自分の手で翼を壊してでも側に置きたい。 けれど、そんな事をすれば二度とあの瞳で見て貰えないだろう・・・。 それは、きっと耐えれない。 其処が、須藤や恭一とは違うのだろう。 手折るのも、愛でるのも自分だけが許されないのなら側に置く意味など無い。 誰かの代わりなんて死んでも御免だ。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 信じられない、信じられない・・・ そうま君は、僕のモノなのに・・・。そうま君の腕に守られる様に抱き留められていた姿を見て、どす黒い感情が沸き上がってきた。 本当だったら、あの場所は僕が居るはずなのに・・・ 「恭一!! 恭一はどこ!! 」 病室のドアを叩くが誰も来てくれない 叩く手が赤く、指先から血が滲む それでも、叩く事を止めれない 震えが止まらない 寒い 怖い 暗い 恭一が居ない・・・ 僕の側からいなくならないって言っていたのに・・・。

ともだちにシェアしよう!