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宿題
時間通り、ウォルフがホテルに戻ってきた。
「ウォルフ、おかえり~!!」
ウォルフの帰りを待ち構えていた、翼が思わず飛びついて出迎えた。
驚きつつも、ウォルフ飛びついてきた翼をしっかり抱き留めた。
「・・つーくん、ただいま。どうしたの?」
「宿題、取りに行きたい!!」
笑顔でそう言う翼を抱き留めたまま、後ろから顔を出してきた咲紀にウォルフは確認をした。
「・・・・さーやは?」
「うん。ウォルフ、私もすっかり忘れてたから・・・。」
「OK。 そしたら、取りに行こうか。」
やった。外に出れる!!
たった二日なのに、自由に外に出れる事がこんなにも嬉しいとは・・・。
自宅のマンション迄、送って貰い二日ぶりに自分の部屋に入った。咲紀は、寮に忘れていた課題があったらしく、寮の方にウォルフの付き人に送って貰う事になった。
翼は自分の部屋の換気をしながら、出された課題をカバンの中から取り出していた。ふと、相馬に貰ったペンが目にとまった。
「・・・相馬・・・。」
いつの間にかペンを手に取っていた。
「・・・彼に、会いたい?」
思わず口に出してしまった事への返答に驚きドアの方を振り返ると、ウォルフがドアに持たれながら翼の事を見ていた。
「ねぇ、ツバサ。 彼に会いたい?」
「・・・会い・たい・・・。相馬に、会いたい。」
そう、口にしたのと同時に翼の瞳からは涙があふれ出ていた。
相馬に会いたい。
会って、話をしたい。僕の作ったゼリーの所為で相馬が死にかけた事も・・・
相馬の身代わりになったと叫んだ子の事も、ちゃんと知りたい。
ボロボロと零れる涙を、ウォルフは拭いながら翼の顔を覗き込んで聞いてきた。
「誠の知ってる、この世界のフィナーレでツバサはどうなるのかな?」
「え・・・?」
僕の知って居る、この世界のフィナーレ?エンディングって事??
僕は今、このゲームのサポートキャラクターだからこれといった最後は無かったはず・・・。
朝日奈が誰と結ばれるかでこの先の進路が少し変わるくらい?
「・・・ツバサ? 君はこの先、死んでしまう事はあるのかな?」
「え? 死ぬ・・・?」
それはあり得ない。
そう、瞬間的に思ってしまった。
「坂本誠」の時だって自分がまさか事故で死ぬとは思っていなかったが、この世界において自分が今日明日ですぐ死ぬなんて事は無いと何処かで安心ていた部分があった。
だから、余計に「人殺し」と言われて吃驚してしまったのだ・・・。
そう、オレが在学中に死ぬことはあり得ない・・・。
何かに思い当たった顔の翼を見て、ウォルフは口元だけに笑みを浮かべた。
「・・・つーくん。さーやに内緒であの子の病院に連れて行ってあげようか?」
「・・・え?」
そう言った、ウォルフの顔を思わず凝視してしまった。
「・・・良いのか?」
そこに行けば、相馬に会えるかも知れない・・・?
「さーやには怒られるだろうけど、つーくんが元気になってくれる方が良いかな。
・・・それに、誠は翼が死なないと思ってるんでしょ?」
近寄ってきたウォルフが頬に触れる。
「・・・ウー。ありがとう。」
頬に触れられた手に思わず、摺り寄りその手を握りしめた。
瞳に溜まっていた涙が一つ、頬を伝い落ちた。
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