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病室
けれど、翼の上の男にはそれは見えても聞こえても居ないようだった。
「お、おい!! 止めろ!!」
身長はそんなに変わらないはずなのに、恭一をどかそうと翼はもがくがびくともしなかった。
「恭一君、君も僕と同じなんだろ? 君の大事な莉緒の心は相馬のモノ。なら、相馬にも同じ気持ち味合せたいだろ?」
「・・・はい・・。」
須藤の言葉には反応した、恭一にの目を見て思わず息を飲んでしまった。
怖い。
この人の目は、何も見てない。
怖い・・・
恭一の腕が翼の顎を捉え様と伸び思わず、叫んでしまった。
「や・・・やだ!!! 相馬!!!」
翼の叫び声と共に、恭一の後方にあったドアが蹴り破られた
「・・え・・・。」
中に入ってきた人物を認識する前に、自分の上に圧し掛かっていた恭一が吹き飛んでいた。
「ひっ・・・。」
「ごめん・・・遅くなった・・・。」
そう言って自分を抱きしめた人物の顔を見た瞬間、翼は意識を手放した。
目覚めると、そこには咲紀と頬を薄っすら赤くしたウォルフの顔があった。
「・・・あ、あれ? オレ・・・」
「おにぃ・・・、心配したんだよ・・・。」
「ごめん・・・。ウーも悪かった。心配かけた・・・。」
赤くなってる頬に手を伸ばすと、手首に包帯が巻かれていた。
「おにぃ・・・。ごめん・・。」
「・・・咲紀のせいじゃないよ。ウーのコレ咲紀? ちゃんと、謝ったのか?」
「・・・だって・・・。」
ウォルフの頬に触れながら、翼は気になっていた事を聞いた。
「・・・なぁ、ウォルフ・・・相馬はどこ?」
「・・・私、飲み物買ってくるね。」
咲紀が病室を出ると、ウォルフが翼の身体を起こした。
「っつ・・・。」
「大丈夫? 大きな瘤出来てたから・・・。」
「大丈夫、ありがとう。」
「・・・青桐相馬だよね。つーくんは、まだ彼に会いたい?」
「え・・・?」
ウォルフの顔付きが変わる。
包帯の巻かれてる手首を掴まれ、思わず身体に力が入ってしまう。
さっきまで、目の前で繰り広げられていた事が脳内を過る・・・。
自分の上に圧し掛かかった男の力の強さを思い出してしまう。
「・・・つーくん、こんな状態で僕は会うべきじゃ無いと思うけど・・・」
「・・・ウォルフ・・・。」
掴んでいたウォルフの手に自分の手を重ね、真っ直ぐ向き合った・・・・
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