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田中は執事でございます。

目の前の豪華な食事の中に、見慣れたお皿があった。 「あ、これ・・・。」 それは、翼が気に入っていたアラレのエビしんじょう揚げ。 「ああ、田中に頼んで作っておいて貰った。」 「田中さんありがとうございます! 相馬もありがとう!!」 「喜んで貰えたなら幸いです。沢山作ったので、沢山食べてくださいね。」 その一言に、思わず笑ってしまった。 「なんか、田中さんお母さんみたいですね。」 っク!! ゴホッ・・・ 「・・・こんなのが母親なのはちょっと嫌だな・・・。」 「佐々木様には私がこんな大きな息子がいる様に見えるんですね・・・」 よよっと泣き真似をして見せた田中に一瞬焦った 「え!!? ちょっと・・・いや、そんな田中さん!!」 プッ・・・ 「田中まで、翼を揶揄うなよ。」 「ふふ、佐々木様 どうぞごゆっくりお召し上がりくださいませ。」 「田中さん・・・」 そう言って、一礼をし田中は部屋を出て行った。 二人の気遣いが嬉しい。 ふと前を見れば、優しく微笑んでる相馬と目が合った。 !!! ゲホっ・・ 「だ、大丈夫か?」 「だ、大丈夫・・・。 」 びっくりした・・・、相馬のあんな顔滅多に見ないから・・・。 一口一口、奇麗な箸使いで相馬の口へ運ばれる。その口元に貼られたカットバンが少し痛いしく見える。 け・・・ど・・・・ な、なんかエロイんですが・・・・・・・・・!? そう思うのに、目が離せない。 「・・・翼、そんなに見られると食べにくいんだけど? もう、お腹いっぱいなのかな?」 「ご、ごめん。 あ!これも美味しいな!」 その後は恥ずかしさを誤魔化すように、出された食事を片っ端から平らげていった所為で、田中さんに慌てて胃薬を貰う事になったのは、咲紀達には秘密だ・・・。 はぁ・・・。大分、苦しいの収まったかな。 用意された部屋のベットに横になりながら、翼はお腹を擦っていた コンコン ノックと共に、紅茶ワゴンを持った相馬が訪ねてきた。 「翼、お腹の調子はどう? お茶入れて貰ったんだけど、飲めそうならどうかな?」 「だいぶ良くなったとこかな・・・、うん。」 はわぁぁ 目の前で相馬が、紅茶をサーブしてくれてるとか・・・、何コレ? 眼福なんですけど? しかも、今相馬が着てるのって・・・パジャマですよね?? え、何それ???その上に、ガウンとか・・・レア過ぎるんじゃ?!!! しかも、ゲストルームなのにホテルの一室みたいなんですけど・・・!! こんなスチルあったっけ?!いや、無い!!  意識がまた遠くへ行っていた翼の鼻腔を、紅茶の香りがくすぐった。 「はい、リラックス効果のあるブレンドをして貰ったから・・・。」 「え・・、ありがとう。」 翼の前にカップを置き、そのまま翼の隣に相馬も腰掛けた。 ・・・近い。 矢場でも思ったけど、相馬の距離が近い。近すぎて心臓が口から出ちゃうんじゃないか? あ、この紅茶美味しい。 帰りに少し茶葉貰えないかなぁ。 紅茶の効果なのか、口から出るかと思った心臓も落ち着いてきた。 もう一口、紅茶を飲もうとカップに口を付け どうしても確認したかった事を思い出した。 「・・・相馬、オレの作ったゼリーで相馬が死にかけた・・・って本当?」 相馬のカップを持とうとした手が止まる。 ・・・。 ・・・・・。 ・・・・・・・・・・・・・。 珍しく相馬が、言いにくそうに口を開いては、言葉を探していた。 「・・・相馬?」 こんな相馬は初めて見た・・・!ゲームでは自信たっぷりの相馬しか見れないから、こんな言葉に詰まってる姿、レアすぎる!!! って!! また、意識飛びそうに成ってた!危ない、危ない。 「・・・翼には、本当に迷惑を掛けたと思ってる・・・。ゼリーの件も翼は何も悪くないし・・・、美味しかったからまた作って欲しいと思っている。」 「え? ど、毒が入ってたんじゃ・・・、食べたのか?!!」 「・・・毒が入ってたのは、莉緒のだけだったから。」 「けど!! もし、相馬が食べたのにも入ってたらどうすんだよ!!!!!!!」 ガッチャン! 勢いよく翼は、手に持っていたカップをテーブルに置いてしまった。 「つ、翼?」 「オレは、相馬に何かある方が嫌だよ!! もし、相馬がオレの作ったゼリーで死んだりしたら・・・って思ったら・・・。」 「翼・・・。済まない。嫌われたくなくて、少し嘘ついた。食べたのは、一口だけで後は検査に回したんだ・・・。だから、泣かないで欲しい。」 え・・・?泣いてなんか・・・ 気づかないうちに、エメラルドの瞳からは涙があふれ出ていた。 「・・・本当に悪かった。」 そう言って、相馬が翼を抱きしめた。 「折角、翼がオレの為に、作ってくれたのに自分が一口も食べれ無いのは嫌だったんだ・・・。」 「そ、そんな事で危険な事するなよぉ・・・。ひっく・・」 「ああ、翼に泣かれるならやらなきゃよかった。」 そう言われ、背中を撫でられるが 涙が止まるよりも、安心感からか溢れ出てきてしまった。 「ホントだよ・・・。別に菓子くらい何度でも作るし・・・それに、相馬と会えなくなる方がオレは嫌だよ・・・。」 相馬のガウンの胸元を思わず握り締めてしまう。  「!! 翼・・・それって・・・」 思わず、翼の顔を確認しようと肩を掴んで引き離そうと・・・・ ぐぅ。 「!? ・・・翼。」 紅茶の効果だったのか・・・、相馬と会えた事で安心したのか、気が付いたら相馬と話してる最中に寝てしまったらしい。しかも、泣きながら寝てしまったせいか目が覚めたら顔ががパンパンになっていた。 「え・・・、オレいつの間に・・・!? って、あ・・・れ?コレ、相馬のガウン・・・。え!? ええ??」 けど、体は何とも無い・・・。ってか、自分でベットまで行った覚えも・・・無い!!! えええええ??一体何が?!!えーーーーーーーーーーー!!

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