129 / 208
見慣れた天井(恭一視点)
白い天井、白い部屋
腕を伸ばしても届かない
伸ばした腕には、見慣れたタグがつけられている
「起きたのか?」
声のした方へ顔を向けると、隣のベットの上で自分と同じように病院着を身に纏って本を読んでいた人物の姿が滲んで見えた。
「。。。きょ・・恭一・・・・。」
「すまない。。。莉緒、涙を拭いに行ってやれないんだ。だから、泣かないで。。。」
そう言って、恭一が笑いかけるが余計に莉緒の涙は溢れた。
「良かった・・・恭一。。。良かった。。。」
もう、会えないと思っていた。
相馬が、そうするとは思わなかったが。。。もしかしたら。。。
そう、あの時は思った。
トントン
「ああ、二人とも起きてたんだね。 気分はどうかな?」
そう言って、白衣をきた小柄な男性が恭一に繋がっている点滴の量を調整した。
「はい、だいぶ良くなりました。」
恭一がそう答えていたのを、まだぼんやりとする頭で莉緒は見ていた
今は、恭一がそこにいる事だけで
良かった・・・
「あ、莉緒君寝ちゃったね。」
「。。。先生、ありがとうございます。」
「僕は医者として当然の事をしたまでだよ。」
眠ってしまった莉緒の腕にも、恭一と同じように点滴がついていた。
あの日、恭一は相馬に全て終わりにされても構わないと思っていた。
その感情のまま、須藤に渡されていた薬を全て自分に使っていた。
その反動で、矢場から病院に運ばれた時には意識がなかったが、使用していた期間が短かったおかげで、運ばれた翌日には目を覚ましていた。
全てはあの事件から…
最初は、事件の記憶を和らげるため・・・それがいつの間にかリオという人物を作り上げるようになっていった。
それと同時に、恭一を求め
その罪悪感からか・・・恭一もまた、莉緒が傷つかない様に
辛い現実を忘れらる様にと、日々の食事に混ぜる様になっていた。
けれど、あの須藤がまた現れたのだった。
それも、最悪のタイミングで・・・。
だから、相馬に愛されているリオのまま全てを終わりにしてあげようと思った
「恭一君、もう二度と間違えない様にね。」
「。。。はい。」
あの時、莉緒は相馬では無く、自分を求めて泣きながら「愛している」相馬に立ち阻んだ。
それが、最後に恭一が見た光景だった。
あの時、自分は死んでも良いと思った。
むしろ、そう願ってもいた。
だけど、ここにまだいる。
莉緒が、それを許さなかった。
莉緒が運ばれた時、中毒症状を起こしていた。
毒ゼリーで運ばれた時は、まだ莉緒に使われていた薬が何かはバレていなかったが、あの相馬に大事にされていた彼に会ってしまい莉緒の心が現実を拒絶した
そしてリオに求められるまま、私は薬を使い続けた。
その上、須藤に囚われた時に通常よりも多く、直接注射された。
すでに、莉緒の心も体も限界が来ていた。
でも、莉緒は負けなかった。
「それに、お礼なら僕よりも研究を後押ししてくれた人達にだね。」
「。。。はい。許されるのなら。。。」
「そうだね。それには、まずは怪我も治して心身共に、莉緒君と一緒に元気にならないとね。」
そう言って、病室を先生は出て行った。
入れ替わる様に、恭二が病室に入ってきた。
「・・・恭二。」
「・・・だいぶ、調子良さそうだな・・・・。安心した。」
「恭二・・・すまなかった。」
「・・・謝るくらいなら、最初からするな。」
「そうだな・・・すまない。」
「怒るぞ。」
「すまな・・い・・・。」
「はぁ・・・。 まぁいい。 恭一、オレは相馬様のもとで仕える事に決めたから。だから・・・」
「・・・そうか・・・。恭二、お前にも迷惑かけた・・・。 」
「・・・気づけなかったオレも悪いから気にしなくていい・・・。 」
恭一の隣のベットで規則正しい寝息を立てている莉緒の顔を一目みて、恭二は病室からでていこうとした。
「・・・恭二。」
「・・・元気でな。」
すでに八月朔日、莉緒、恭一の処分を青桐家は正式的に決めていた。
ともだちにシェアしよう!