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顔面凶器

コンコン ノックと共に、ドアが開けられた。 「翼、今いいかな?」 「返事する前に入ってきてるじゃん・・・」 「あれ、寝てた?」 「・・・横になってただけだから・・・。」 「あ、別にそのままで構わないよ・・・。疲れてるだろ?」 ベットの横に椅子を寄せて、腰をかけた。 翼は、上体だけ起こした。 「つーくん・・・」 「・・・それ、言ってたの子供の頃だけだろ・・?」 「ふふ、思い出したんだ?」 「思い出したというか・・・、途中から普通に呼んでただろ?」 そう言って、ふんわりと微笑んだ翼の顔をマジマジと見入ってしまう 「ちょ・・・ウォルフ?? おーい?」 「・・・で、翼がしたい話って、この世界の事だろ?」 「・・・うん。ウォルフは僕の事を知ってるよね?」 「佐々木翼だろ? 僕の幼なじみで・・・前世の記憶持ちというか・・・転生者っていうのかな? 転生前は、坂本誠くん?」 「・・・やっぱりこの世界は、ゲームの世界なのか?」 「ゲーム・・・。確かに、前にいた世界とは違うかもしれないね。」 その言葉に、翼の顔が曇る。 ウォルフにはそれが、不思議に思えた。 彼のために、作られた世界と言っていたのに・・・なんで、こんな顔になってるんだ? 「けれど、今回の事はつば・・・誠も知らなかったんだろ?」 「・・・翼でいいよ。ぼく・・いや、オレは今、佐々木翼だし。」 ウォルフが言い直した事に少し嬉しかった。 「・・・君は、変わったね。 誠の影響なのかもしれないけど・・・、今の方がとても魅力的だよ。」 「へ? ウォルフ?」 コロコロと変わる表情にまっすぐにと見る瞳 あの人も、翼の印象が変わった事に気がついた様だったな。 「ねぇ・・・翼。もし僕と君が結ばれるシナリオだったらどうする?」 「え? お、オレと、ウォルフが?? 」 思いがけない事を言われ、翼は混乱した。 確かに、今回の事件は誠の知ってるゲームのシナリオでは無かった。もし・・・自分の知らないうストーリーがあったなら・・・ けど、ウォルフは・・・ 「プッ。 翼、そこは即答しないとこの世界じゃ、付け込まれるよ。」 そう言って、翼の頬にキスをした。 「え? ウォルフ??」 唇が触れた所から顔が熱が広がる 慌てて顔をガードする様子がツボに入ったのか、ウォルフの笑いが止まらなかった 「本当、今の君の方が僕は好きだな。」 ひぃいいい・・・ イケメンが!! 顔が迫ってきてる〜って!!! パン!! 「あ・・・ごめん。 つい。」 「・・・ひどぃなぁ・・・。」 「だ、だって今、お前キスしようとしただろ!!」 「えー、頬はよくて口がダメなの?」 「あ、当たり前だろ?! それに、もしお前と結ばれるとしても、オレは相馬が好きなんだよ!!」 「・・・推しだから?」 「そう!! むしろ、推しと恋愛できるかもしれないならオレは、ガチ恋夢系男子になる!!!」 「え・・・??は??? ガチ恋・・・夢・・系・・・?」 「たとえ、お前と結ばれるシナリオでも・・・、相馬が良いんだ・・。」 叩かれた頬を撫でながら、ウォルフが横目で見る。 「・・・それで良いと思うよ。 僕はね、翼が思うようにするのが良いと思ってる」 「・・・ウォルフ。 病院でもそう言ってくれたよな・・・。」 自分の思う様に・・・か・・・ 「けど、翼・・・、これだけは覚えておいて。僕は、君達を泣かせる奴がいたら、今度は許さないから。」 ひぇ!! イケメンの真顔に寒いものを感じたタイミングで、執事がウォルフを迎えにきた。 「あー、もうそんな時間? もう少し、翼と話したかったけど・・・。つーくん、僕の言った事忘れないでね。」 そう最後は翼にだけ聞こえる様 耳打ちしてウォルフは執事と共に部屋を出て行った。

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