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もちろんファーストです

はぁ・・・。 あの夜の光景を思い出すと、未だに胸が熱くなる。 無意識に、胸に手を当てていると 隣の席に座っていた咲紀が心配そうに聞いてきた。 「・・・おにぃ? 胸痛いの大丈夫?」 「え・・ああ、大丈夫!!」 「ホントに? 検査の時だって倒れたりするし・・・。」 「大丈夫だって! 結果はなんともなかったんだし!」 「けどさ・・・、また戻ったらおにぃ一人暮らしになるのに・・・。」 「むしろ、あんなに色々される方が、オレは疲れるかなぁ・・・。」 「凄かったよね〜! お手伝いさんや執事にシェフまでいて!! あーあのステーキ美味しかったなぁ・・・」 「・・・・」オレは味わかんなかったやつな・・・。 咲紀の話もそこそこに翼は窓から見える空の景色を眺めていた。 伊集院先輩の婚約者だったガマガエルは、ウォルフの父親の研究所職員でもあった所為で色々な後始末の為、忙しくなった両親達にもちょっと申し訳なく思いつつも・・・ 帰国の予定を早める事にしたのだけど・・・ 「な、なんで!!貴方達夏の間はここに居てくれるって言ったじゃない〜!!」 「そうだぞ!!翼!! 向こうで一人で暮らすより、ここに居れば良いじゃ無いか!!」 「そーよそーよ!!ご飯だってここにいれば、シェフが作ってくれるのよ?」 「それに、また倒れたりしたらどうするんだ?!」 早めに帰国すると伝えてから、丸二日このやりとりが繰り返され うんざりしてたところに、一足先に相馬が帰国すると挨拶に来たので、ぽろっと愚痴ってしまったら、何故か今日の帰国が決まっていた。 「けどさ、おにぃ。帰国しても相馬さんの所で夏過ごすなら、あまり変わらないんじゃないの??」 咲紀の方をチラッと見て、翼はブランケトを頭でかぶった。 そう・・・。 何故か、相馬の所で残りの夏休みを過ごす事になってたんだよ・・・・。 なんでだ?? ってか、検査受けに行った辺りからうちの両親達は相馬に対して、絶対の信頼がある様にも思えるのだが・・・??? けど、この間泊まった時は、いつの間にか朝になってたし・・・。 それに、相馬がOKだったら、朝比奈と黄瀬誘ったら楽しそうかも・・・! ふぁぁ・・・ なんか、ちょっと楽しみになってきたら眠くなってきた・・・・ 「・・・おにぃ? ・・・寝ちゃったの?」 すぅすぅと寝息を立て始めた翼のブランケットをかけ直すと、咲紀も窓の外を眺めながらいつしか眠っていた。 ・・・ん・・・。ここは・・・ 大きな歓声が聞こえる。 見覚えのある、場所。  強いヒカリの方へ走って行くと、そこはスタジアムだった。 え?これは、リョウの試合? けど、自分の立っているところはフィールドの真ん中 相手のチームがドリブルをしてボールをパスしたりしている それを追いかける黄瀬の姿・・・ 自分の真横をすり抜ける ああ、これは夢か・・・。 そう思った瞬間、自分の横を通り過ぎたリョウが相手チームの選手を接触し 倒れた えっ?! 「リョウ!!」 がバッ 「・・・ちょ!おにぃ!! 恥ずかしい!!」 「え・・・あ・・・。すいません・・・・」 機内食を持ってきた客室乗務員と目が合ってしまう 少し驚いた顔をされたが、特に気にする事なく機内食のリクエストを聞かれる 「ビーフORフィッシュ?」 「・・・ビーフ。」 むしろ、笑ってくれた方が良かった・・・。 ああ、また肉の味がわからないな・・・泣

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