142 / 208
もちろんファーストです
はぁ・・・。
あの夜の光景を思い出すと、未だに胸が熱くなる。
無意識に、胸に手を当てていると
隣の席に座っていた咲紀が心配そうに聞いてきた。
「・・・おにぃ? 胸痛いの大丈夫?」
「え・・ああ、大丈夫!!」
「ホントに? 検査の時だって倒れたりするし・・・。」
「大丈夫だって! 結果はなんともなかったんだし!」
「けどさ・・・、また戻ったらおにぃ一人暮らしになるのに・・・。」
「むしろ、あんなに色々される方が、オレは疲れるかなぁ・・・。」
「凄かったよね〜! お手伝いさんや執事にシェフまでいて!! あーあのステーキ美味しかったなぁ・・・」
「・・・・」オレは味わかんなかったやつな・・・。
咲紀の話もそこそこに翼は窓から見える空の景色を眺めていた。
伊集院先輩の婚約者だったガマガエルは、ウォルフの父親の研究所職員でもあった所為で色々な後始末の為、忙しくなった両親達にもちょっと申し訳なく思いつつも・・・
帰国の予定を早める事にしたのだけど・・・
「な、なんで!!貴方達夏の間はここに居てくれるって言ったじゃない〜!!」
「そうだぞ!!翼!! 向こうで一人で暮らすより、ここに居れば良いじゃ無いか!!」
「そーよそーよ!!ご飯だってここにいれば、シェフが作ってくれるのよ?」
「それに、また倒れたりしたらどうするんだ?!」
早めに帰国すると伝えてから、丸二日このやりとりが繰り返され
うんざりしてたところに、一足先に相馬が帰国すると挨拶に来たので、ぽろっと愚痴ってしまったら、何故か今日の帰国が決まっていた。
「けどさ、おにぃ。帰国しても相馬さんの所で夏過ごすなら、あまり変わらないんじゃないの??」
咲紀の方をチラッと見て、翼はブランケトを頭でかぶった。
そう・・・。
何故か、相馬の所で残りの夏休みを過ごす事になってたんだよ・・・・。
なんでだ?? ってか、検査受けに行った辺りからうちの両親達は相馬に対して、絶対の信頼がある様にも思えるのだが・・・???
けど、この間泊まった時は、いつの間にか朝になってたし・・・。
それに、相馬がOKだったら、朝比奈と黄瀬誘ったら楽しそうかも・・・!
ふぁぁ・・・
なんか、ちょっと楽しみになってきたら眠くなってきた・・・・
「・・・おにぃ? ・・・寝ちゃったの?」
すぅすぅと寝息を立て始めた翼のブランケットをかけ直すと、咲紀も窓の外を眺めながらいつしか眠っていた。
・・・ん・・・。ここは・・・
大きな歓声が聞こえる。 見覚えのある、場所。
強いヒカリの方へ走って行くと、そこはスタジアムだった。
え?これは、リョウの試合?
けど、自分の立っているところはフィールドの真ん中
相手のチームがドリブルをしてボールをパスしたりしている
それを追いかける黄瀬の姿・・・
自分の真横をすり抜ける
ああ、これは夢か・・・。
そう思った瞬間、自分の横を通り過ぎたリョウが相手チームの選手を接触し
倒れた
えっ?!
「リョウ!!」
がバッ
「・・・ちょ!おにぃ!! 恥ずかしい!!」
「え・・・あ・・・。すいません・・・・」
機内食を持ってきた客室乗務員と目が合ってしまう
少し驚いた顔をされたが、特に気にする事なく機内食のリクエストを聞かれる
「ビーフORフィッシュ?」
「・・・ビーフ。」
むしろ、笑ってくれた方が良かった・・・。
ああ、また肉の味がわからないな・・・泣
ともだちにシェアしよう!