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(恭二→翼 視点)
エレベーターが地下駐車場に着くと、二台の車が停まっていた。
「じゃあ、また・・・。とりあえず、リョウはプール迄に宿題と筋トレだね!」
「だな・・・。まぁ、トレーニング行く時連絡する」
「うん。そうして。」
「じゃ・・・」
恭二が車のドアを開け、朝比奈が乗ったのを確認した後に黄瀬も車に乗り込んだ。
二台の車がそれぞれの目的地に向かったのを見届け、恭二は主人の待つ部屋へと戻った。
「お帰りなさい。恭二さんもよろしければいかがですか?」
部屋で、紅茶を飲んでいた田中が恭二をお茶に誘った。
「はい・・・いただきます。」
「あちらの様子は如何でしたか?」
恭二の前に香りの良い紅茶のカップが置かれる。
「そう・・ですね。近々、こちらに来られるかと思います・・・。」
「おやおや・・・良いワインの手配をしておきますか。」
「あ、ご友人の方々は本日はご自宅に無事着いたそうです。」
自分のカップにもおかわりを注ぎ、田中も恭二の向かいに座った。
カップを持ち上げる所作に恭二の目が行く
田中という男は一切の無駄が動きにない
青桐相馬の元で使える事になり、田中に指導されるも内心驚く事ばかりだった。
莉緒の件もだけど・・・、伊集院製薬の件も相馬が乗り出した事で結果として兄である青桐冬馬が代表を務める製薬会社との業務提携という所まで話を進めたその全ての手配、根回しをこの男一人で行っていた。
「・・・どうかしましたか?」
「いえ・・・、あの・・・先程相馬様のご友人を見送らせて頂いた時、ご友人方がトレーイングと仰ってたのですが・・・」
「・・・恭二さん、あなたも人には良く見られたいですよね?」
「・・・まぁ・・・はい。」
「そういう事です。」
・・・。
この人がこう言う言い方をする時は自分で考えろと言う事
自分への宿題と言う事か・・・。あの佐々木翼が言った言葉と関係があるのか・・・?
佐々木翼・・・、恭一に襲われかけてた青桐相馬の友人。
今、最も青桐相馬に影響のある人物。
恭一の件で、許しを乞うつもりだったのに、謝罪一つで許した彼。
きっと、愛されて育ったんだろうな。
ふと、自分の手元に影が差す
「・・・、そろそろ寝ましょうか。」
「あ・・・。」
手に持っていたカップを田中が片付ける。
自分たちに用意された部屋は、入り口すぐではあるがバストイレにミニキッチンが付いて男二人でも、ほぼ寝る為なら充分すぎる部屋だった。
「ふぁぁ・・・。 寝れるか心配だったけど、あいつらと久々に騒いだら・・・眠いな・・・。」
朝比奈達をエレベーターホールまで見送った後、部屋まで相馬に手を繋がれた時は、心臓が飛び出すんじゃないかと思ったっけど・・・。田中さんがお風呂の用意してくれて、すでに部屋で休んでるのを聞いたらホッとしたのか・・・お風呂でリラックス出来たからなのか・・・。
めちゃくちゃ、眠い・・・。
この部屋の隣に相馬がいるとか・・・そんな事はどうでもいいくらいに眠い。
部屋にある扉の存在も気になるけど、今はひたすらに眠い・・・・
そんな事を考えているうちに翼は寝てしまった。
その夜、部屋の中扉がノックされたのも気がつかない程に・・・
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