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強く握っちゃダメ
「相馬、お疲れ様。 はい、半分」
車に乗り込むなり、相馬に翼は持っていたアイスの半分を渡した
「え・・・あ、ありがとう?」
「ここを取って、そのまま咥えて食べて?」
「・・・」
目の前で、食べ方を教えてあげて相馬の口に咥えさせた。
「佐々木様、宜しければクーラーボックスがございますのでそちらお預かりいたします。」
スーパーで買ったアイスを田中に渡し
車は発進していった。 窓の外で、あかねちゃんが手を振ってくれていたので、翼も手を振り返していた。 その横で、相馬は初めて食べるアイスに若干戸惑っていた。
「それ、二人で半分個だから、オレの半分ね。 美味しい?」
「・・・。」コク
小さく頷いた、相馬に少しほっとした。
あっぶなぁ・・・。車から、相馬が降りて来ないとか・・・、絶対怒ってるじゃん!?
ホント、昨日みたいに車の中が絶対零度の無言とか怖すぎるし・・・。
怒ってないって言ってても、目が笑ってないんだよなぁ・・・。
イケメンの真顔は怖い。
まぁ・・、そんな顔の相馬もカッコイイけど。
「・・・リョウと会ってたのか?」
「ん? ああ、スーパーで偶然会ったんだ。」
「・・・あいつ、宿題は進んでるのか?」
「どーだろ?? でも、プール楽しみだとは言ってたな・・・。」
・・・プールかぁ・・・。むしろ、あの顔・・・なんだったんだろう。
黄瀬が不意に見せた顔が脳裏から離れない・・・
って、なんか車内寒い????
「・・・相馬?どうかした?」
「・・・別に。 これ、ちょっと甘いな。」
半分減ったアイスを持ってる手に思わず力が入ったのか、勢いよく中身が飛び出した。
「うわぁ! ちょっ!!相馬。 強く握っちゃダメだろ!! あーもう、もったいないなぁ・・・。」
パクッ
思わず、こぼれるアイスが勿体ないのと車が汚れる!!そんな気持ちで、口でアイスをキャッチしていた
そう・・・
相馬の握ったままのアイスを・・・。
「あ・・・ほぉめ・・・ん(ごめん)」
口に咥えたまま相馬の方をチラッと見ると、そのままの状態で相馬は固まっていた・・・
かと思ったら、勢いよくアイスを握られて翼の口に流れてくる
「ちょ・・ん・・・。ふぁ・・・こ、こぼれちゃ・・・・ん・・・。 ちょ・・・!! そ、相馬!!」
全部、口に押し出される形になり若干頭がキーンとなりながらも、翼は唇についたアイスを舐めた。
「・・・相馬のアイス食べちゃてごめん・・・。って・・・おーい?? 相馬?? 」
「・・・だ、大丈夫だ・・・。」
そう言って、アイスから手を離した相馬は、窓の方を向いてしまった。
・・・やば・・・やっぱ、こんな庶民アイスなんか食べさせたから、怒っちゃったのかな?
しかも、相馬の食べてたのオレが食べちゃったし・・・。
相馬の・・・
食べ欠け・・・・・・・・・え・・?!
あ・・・れ?それっって・・!! 間接的な・・・あ・・・え・・・!??
うわぁぁぁ・・・・は、恥ずかしい!
翼も、思わず反対の窓の方を向いてしまう。
ガラス越しに、目が合うとお互いが逸らすくせに、気になってまた見てしまう・・・そんな事をマンションにつくまで繰り返していた。
ミラー越しに、全てを見ていた田中は
今日、翼が買ってきたアイスを冷凍庫に常備する事を心に誓ったのだった・・・。
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