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ジム(朝比奈と黄瀬)
タッタッタッタッタ・・・
ふぅ・・・
ジムでリョウがランニングマシンで走ってると、後ろからハルに声を掛けられた。
「リョウも来てたんだ。」
「おー、ハル。 さっき、来たとこかな。」
「へー・・・って、もう5キロ走ってんじゃん。」
「あー、まだ半分だわ。」
「ちょ・・・、大丈夫なの?」
隣のマシンで朝比奈も走り出す。
「まぁ・・・速度落としてるし。」
「あんま無理するなよ?」
「じゃー、お前に合わせてもう少し速度落とすかな。」
二人で並んで走ってると、ハルから声を掛けてきた。
「で、宿題は終わってるの?」
「オイオイ、オレだってちゃんとやってるって〜」
「わかってるって。写真に耐え得る体型に仕上げとかないとね〜。」
「オレは別にいつでも良かったんですけど〜?」
「え〜、僕のせいって事〜?」
「いや、ホントあの空気はマジで・・・気を使ったわ。」
「ってか、リョウだってやっと包帯取れたんだからさ・・・」
そう言って、リョウの走ってる足元を見た。
「もう、大丈夫だって。 それに、翼に変に心配かけるのもアレだしな。」
そう言って笑った顔を、ハルは複雑な顔で見ていた。
「? ハル、どうかしたか・・・」
「別に〜」
ちょっと面白くないだけ。
あの日、試合が終わった後リョウは入院した。
相手選手のスパイクが当った部分が思った以上に腫れて、出血もしていた。
けれど・・・それよりも酷かったのは、足首の捻挫と肉離れだった。
試合3日前に、ロードワーク中に車道に出てしまった子供を助けた時に足首を捻っていたのを、テーピングで固定して試合に出た。
あの一試合のみという条件で。
その事に僕が気がついたのは、試合の前日に相馬からメールを貰って様子を見に行ったから・・・。
相馬から連絡貰ってってのは、癪に触るけど・・・。
怪我したなんて、人に言えない気持ちは痛いほど分かった。
ホント、あの試合で勝てて良かった。
「ハル? おーーーい、ハル〜?? 大丈夫か?ボーッとしてたぞ?」
「え? 何? ごめん、無心になってた。」
「あー、それ分かる。 ってか、帰りアイス食わねぇ?」
「いいけど・・・、カロリー気にしなくていいの?」
「今日、久々に食べてさ〜。白いのもいいんだけど、やっぱ定番のも食べたくなってさ。」
「なら、その分のカロリー消費しないと〜。」
「だな!! んじゃ、ラスト1キロ、速度上げて走るか!!」
「えー、それはリョウだけにして〜。」
結局、二人とも速度を少し上げ走り終えた。
朝比奈がシャワーから出ると、上半身裸のままでリョウがアイス片手に待っていた。
「・・・身体冷えるよ。」
「さっき、フロントに言ったらアイス用意してくれたらしくてさ。着替える前に取りに行っちゃった。」
「いや、そこは着とこうよ・・・。」
そう言って、ハルも下だけ履いた格好でリョウの隣に座った。
「で、リョウの言ってたアイスって、それ?」
「あ・・・うん。」
ハルが、リョウの持ってるアイスの袋を覗き見ると、思わず身体を退け逸らされる
そのまま、勢いよく袋を開け、アイスを半分にし
片方を朝日奈の顔の前に突き出した。
「ほ、ほら。ハルの分!!」
「え・・うん、ありがと。 これ、懐かしい〜」
朝比奈が受け取ると、黄瀬はそのまま視線をハルに向ける事なく、アイスを開け食べ始めた。
「だよな!! 今日、翼と久々に食べてさ〜。このキャップの方のも思わず多べちゃうんだよなぁ・・・」
ベラベラと余計な事を喋ってる黄瀬の言葉に、朝比奈が思わずこぼした言葉は聞こえていなかった
「・・え? 翼君と今日会ったんだ・・・。」
「ん? 食べないのか?」
アイスを咥えたまま、朝比奈の方をチラッと見て、またすぐに黄瀬は視線を戻した
「・・・キャップのとこあげようか?」
そう言って、キャップ部分をリョウの前に出す。
「いらんわ!!」
ぺちっとその手をはたかれる
何度かそんなやりとりをしてると、どちらともなく笑いが漏れた。
「ふふ ってか、こういうの相馬は食べた事なさそうだよね。」
「だよな〜。オレもそう思う。 これさぁ、グッと握っちゃうと・・・」
「うわっ!」
その声に、ハルの方に顔を向けると
アイスが手に溢れていた。
「こぼれるって言おうとしたそばから・・・」
「あーあ、手に垂れちゃった・・・。」
朝比奈が慌てて、溢れて伝ってくるアイスを舐める
「!!」
「ちょっと、手 洗ってくるね。」
「お、おう・・・。」
アイスを咥えたまま、ハルが手を洗いに行ったの見て
思わず深いため息が漏れた
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