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ねぇ

はぁ・・・。 僕らしく無いな・・・。 鏡に映る自分の姿に、虚しさが込み上がる。 幼い頃から、天使の様な愛らしさと美少女の様な可憐さと儚さで、売れっ子ジュニアモデルとして活躍してたが、あの事件をきっかけに商品としての自分に嫌気が差した。 それと同時に、逃げ場として始めた陸上で結果が出た事で、芸能の活動はピーク時よりセーブした。 なのに・・・ こんな、誘う様な格好して・・。 はぁ・・・。 「ハル? 大丈夫か?」 「え・・あ、うん。 どうかした?」 「いや、それこっちのセリフ。遅いから様子見に来てやったんだって。 あー、ほら体冷えてんじゃん。髪、ちゃんと乾かせよ。」 そう言って、Tシャツを着た黄瀬が様子を見に来た。 手にもっていたタオルでハルの頭を拭いた。 「ちょっ、リョウ!自分でやるって!!」 リョウの手から、タオルを取る。 「ほら、風邪引くぞ?」 Tシャツも渡される 「ん、ありがと。」 タオルをリョウに渡した。 その時、リョウの目がハルの胸元から逸らされた事に気がつかなかった。 翼がバスルームから出ると、リビングで相馬がパソコンで資料を作成していた。 「あれ、相馬。珍しいね。リビングで作業なんて・・・。」 「なんか、部屋だと気分が乗らなくてね。」 「ふーん?」  髪をタオルで拭きながら、冷凍庫からアイスを取り出した。 「相馬も食べる?」 「・・・それ、今日買ってきたやつ?」 パソコンを閉じて、翼の後ろから相馬も冷凍庫を覗き込んだ。 「そー、車で食べさせたのとは違うやつ。こっちが、コーラで、青いのがソーダ味。黄色いのは梨味!どれがいい?」 「翼のおすすめは?」 「安定のコーラかな? けど、ソーダも捨てがたい・・・。」 「じゃあ、翼の一口頂戴。」 そう言って、相馬はコーラ味を選び、翼にソーダ味を渡した。 「ん、まーい。 やっぱ、風呂上がりこれだよなぁ・・・。」 「うん。 翼の食べたい。」 そう言って、自分の食べていた方を翼の前に差し出す。 翼も自分のアイスを相馬の前に出す。 シャクッシャク 「資料の続きやらなくていいのか?」 「あぁ・・・食べたらやるよ。」 シャクッシャク 「・・・翼、どうかした?」 「なんで?」 アイスを食べながら隣に座っている相馬を見る。 ・・・なんでと言われても・・・。翼はこの状態をどうとも思ってないんだろうけど。 「・・・・気のせいなら、いいや。 続きやるかな・・・。」 「見てても大丈夫?」 「・・・いいけど、楽しく無いと思うけど・・・?」 そう言って、相馬はパソコンで資料を作り始める。 「・・・それ、生徒会の資料?」 「来年、生徒会選挙だから、その募集要項。伊集院先輩は、前任の指名で決まったから、使わなかったからさ。」 「伊集院先輩、留学するんだっけ?」 「ああ・・。卒業まで待つつもりだったらしいけど、今回の件であの人、自分の進路決めたみたいだな。」 「・・・そっか。」 「翼にも、伊集院先輩感謝してたぞ。あの分かり易い挑発、ありがとうって。」 「えー、なんだよそれ〜。 けど・・・、先輩、留学かぁ・・・。」 「どうせなら、後任指名してくれればよかったんだけどな。」 「ってか、相馬じゃ無いんだ? 生徒会長。」 「・・・。」 「・・・相馬? もしかして、指名されたけど嫌で、募集要項作ってるとか・・・?」 ・・・図星か。 

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