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朝比奈(4)
・・・どうしよう・・・。
まさか、寝言を言ってたとか、そんな事気がつかなかった・・・。
けど、朝比奈はこのゲームの主人公。
もしかしたら、黄瀬の事・・・。
主人公と黄瀬のエンディングは・・・
あ、れ・・・。
そしたら、朝比奈は・・・
「翼君? 大丈夫?」
「・・・ハル。 きっと、信じてもらえないだろうけど・・・」
どの道、何もしない訳にはいかない・・・。
それならば、主人公の朝比奈に委ねるのがいいのかも知れない。
僕は、この世界じゃ主人公のサポートキャラなのだから。
けど、この事は知られたくない・・・。
だから、ごめん。
少しの嘘は許して欲しい。
「・・・リョウの足が?」
「・・・いつの試合かはわからないけど・・・。」
「・・・そっか。話してくれてありがとう。僕も、リョウの様子には気をつけておくね。」
ニッコリと微笑まれて、胸がチクンと痛んだ。
坂本誠の僕は、|朝比奈《主人公》からしたら邪魔な存在なのかも知れない・・・・。
「・・・翼君・・・。まだ、起きるには早いから・・・今度はゆっくりとお休み・・。」
そう言って、朝比奈が横になる様に促す。
その言葉に、大人しく従い横になると今度は、朝までうなされる事もなかった。
「あ、おはよ〜。 翼君も、もう朝ごはん食べれそう?」
「え? あ、うん。」
「そしたら、相馬達が戻ってきたらラウンジに行って食べようか。」
「あれ・・・いないのか??」
「ああ、あの二人はここのジムだって・・・」
「ハルは行かなくて良かったのか?」
「ん? 僕? 翼君が一人になっちゃうのに・・・?」
「別に、田中さんとかも居るし、良かったのに・・・。」
部屋のミニキッチンで、お茶の用意をしていた田中の事を見て朝比奈に言うが、特に気にした様子も無く朝比奈は翼に言った。
「まぁ、休む時はしっかり休むのが僕のスタイルだからね。」
「そっか・・・。」
昨日、朝比奈に言えなかった事が脳裏を過ぎる。
自分が存在する事でシナリオが変わった。そのせいで、攻略キャラ達の時間軸が解らない。
だから、言えなかった。聞けなかった。
シナリオで決まっている事だとしても、この世界で彼らは一生懸命に生きている。
そんな彼の足が・・・。
「・・・翼君、そんな心配そうな顔しなくても、昨日の事は言わないから安心して。それに、今朝、リョウの様子見たけど・・・大丈夫そうだったから。」
「・・・ああ、それなら安心だ。 」
田中の入れてくれた、お茶を飲んでいると相馬とリョウが戻ってきた。
「あー、腹減った!! ラウンジに行こうぜ〜!!」
「あ、翼も起きたんだね。 ゆっくり寝れた?」
「お帰り〜。 おー、ぐっすり寝てたわ。」
「ちょっと、リョウ! また、頭 濡れたままかよ。」
ハルがリョウの頭をタオルで拭いている姿から、目が離せなかった。
「ちょ・・・ハル止め・・・翼?どうかしたか??」
ワシャワシャされてたリョウと目があって、思わず逸らしてしまう。
「え・・と、腹減ったなぁ・・・て思って。」
「だな!! ハル、人の頭はもうほっといてくれ。朝飯食いに行こうぜ!!」
頭に触れていたハルの手を避けて、リョウは翼の手を取る。
翼もビックリしつつも、そのまま部屋を出て行った。
「ちょっつ!リョウ!! ・・・はぁ・・全く・・・って・・・・」
部屋の温度が急に下がる
「おい・・・・。朝っぱらからか?」
冷気の元を睨むように見ると、人でも仕留めそうな顔の相馬が閉まったドアを見ていた。
「ほら、相馬、僕らも行こう。 なんなら、手でも僕が繋いであげるけど?」
「・・・必要無い。 いくぞ。」
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