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朝比奈(5)
朝比奈の前を横切ろうとした瞬間、相馬の腕を掴んだ。
「おい、繋がないっていっただろ?」
「・・・なぁ、相馬。翼君が夜中うなされてるの知ってるか?」
「・・なんの話だ?」
「・・・気付いてなかったの・・・か。」
「ああ、その話詳しく。」
・・・・・・・・
「・・・リョウ、どうかしたのか?」
「・・何が?」
バターの効いたオムレツが二口で目の前から消えていく。
「なんか、ハルと有った?」
「・・・なんで?」
次から次へと、お皿の上から食べ物が消えていく。
そのスピードに少し唖然としながらも、黄瀬を見た。
昨日、朝比奈に黄瀬の事を話した。
この先、いつの試合かはまだわからないけど、試合中にか彼は倒れる。
膝の故障・・・。
けど、これを回避できれば、黄瀬はプロになれる。
でも・・・それは、主人公とのエンディング。
なのに・・・、黄瀬は朝比奈の事を避けている?
どうして・・・??
「・・・? リョウどうかした?」
一瞬、黄瀬の動きが止まった。
一体何が? 視線の先を見るとそこには
「ふぁぁ・・・。」
か、神絵かな?! 何あれ・・・。なんで、腕組んでるんだ??!
やば・・・。
って・・・、リョウ?
「・・・リョウ? どうした?」
「あ、うん。大丈夫。・・・あの二人、絵になるよな・・・。」
「え・・・あ、うん。そうだね。ホント、絵になるよね!」
「・・・翼、なんか・・変わった?」
「何が?」
「前は、相馬とハルの事・・・いや・・・なんでもない。」
「・・・リョウ? 」
確かに、少し前の僕ならあの二人の事を見てモヤモヤしてしまってただろうけど・・・、相馬への気持ちを認めた今はあの二人の姿を見ても前の様な気持ちにはならなかった。
もしかして、黄瀬は・・・
「・・・相馬って、やっぱ男から見てもカッコいいよな・・・。」
え? 相馬??
「そう、だね・・・。」
「身長もあるし・・・勉強もできるし・・。金も権力もあるし・・・。今朝も、一緒に少しとレーニングしたけどさ、あいつよりも先にオレの方が息があがっちゃってさ・・・。」
サラダを突っつきながら、そう話す顔はどこか苦しそうだった。
「・・・オレは、リョウもすごいと思うけど?? ってか・・・相馬と比べたら、みんなダメじゃないか?」
自分の皿から、ソーセージを一つ載せる。
「リョウだって、オレより運動もできるし、明るいし。兄妹思いだし・・・、何よりイケメンじゃん?」
そう言って、笑いながら、もう一つ。皿に載せた。
「・・・サンキュ。 確かに、相馬に比べたらダメだな。」
「そーだよ。 相馬と比べたら、オレなんてミジンコになっちゃうよ。」
「翼、さすがに、それは言い過ぎだろ〜。せめてクリオネラくらいじゃね?」
「何それ、オレそんなに、可愛い?」
思わず、両方のほっぺに手を当てて、顔を作る。
「ちょ・・・おま。まぁ・・・、翼は可愛いよな。」
笑った口元から、八重歯が覗く
「お? ありがと。 リョウもカッコいいよ。」
二人で思わず笑い合ってしまう。
そんな二人を、複雑な顔で相馬と朝比奈は見ていた。
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