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来ちゃった

相馬と田中がロビー奥で話してると、恭二が朝比奈と黄瀬を呼びに来たその後ろから、見覚えのある長身の男が駆け寄ってくるのが見えた。 「つーくん!!! 良かった〜。迎えに来たよ♪」 「!! ウォルフ!」 「え・・・だ、誰?」 慌てる、朝比奈と黄瀬を横目に、翼が走って来た外国人に抱き抱えられる。 「こ、公爵様・・・、急に走られては困ります。」 ウォルフの後から、黒スーツの男がついてくる。 その後ろから、相馬が黒いオーラを纏ってこっちに歩いてきてるのが、ウォルフの肩越しに見えた。  「ちょ! ウー!! 下ろしておろして!!怖い怖い。」 「あはは! つーくん、また軽くなったんじゃ無い?? ちゃんと食べさせてもらってたの?」 ピクッ 「・・・翼様、本日のご夕食は和牛のすき焼きにでも致しましょうか。」 そう言って、田中に後ろから脇を支えられゆっくりと下される。 「え? た、田中さん?」 「あれ、貴方は確か、青桐家の執事さん。ディナーの心配は無用ですよ。」 「いえ、相馬様の翼様のお身体の管理は青桐家に仕える私の役目ですので。」 「あはは、面白い事、言いますね。翼が誰のだって?」 「ああ、申し訳ありません。 私とした事が! まだ、相馬様の大切な御学友の翼様でしたね。」 翼の肩を田中の手が掴む。 ウォルフは、翼の手を握ったままはなさい。 (い、今・・・田中さん、なんて????) ((ええぇ・・・・何、この空気。)) 「・・・朝比奈様、黄瀬様。お車のご用意ができてますが・・・。如何なさいますか?」 「つ、翼!! 車きたらしいから!! オレ行くな! また、新学期!!メールするわ!」 「ぼ、僕も行くね〜!! 僕もメールするよ〜!! じゃ、新学期!!」 2人は恭二に案内されて、エントランスの方へと向かっていった。 (えーーーーーーーー、オレもココから逃げたいんですけど?) 「・・・田中、翼から手を」 相馬が、田中に告げ、翼の肩から田中が手を離す。  「・・・申し訳ありません。」  『やだね〜、執事にまでそんな態度って、随分余裕の無い男だな。』 『一体、なんの用だ?』 『別に、新学期からお世話になるからね。』 「あー、また! お前達、オレにもわかる様に日本語で話せよ!!」 相馬とウォルフが話している間に翼が割って入ると、翼に向き合ってウォルフが笑顔を見せた。「つーくん、今日は僕とディナーに行こうか♪」 「はぁ?? 何、ウォルフ?? その為にこっち来たのか?」 「違うよ〜! 僕も新学期から、つーくんと同じ学校に通うんだよ〜。」 翼の手を取り、指先にキスを落とす。 「え・・? まさか、交換留学生って・・・、お前なのか?」 そのまま、ウォルフの手を握り締めてしまう。 「そうだよ〜。びっくりした?」 「ああ、咲紀も何も言ってなかったし・・・。」 「翼、そろそろ・・・」 相馬の眉間にシワが寄ってる事に翼は気付いていなかった。  「え・・・あ、ああ。 ウォルフ、オレ今・・・」 「ああ、彼の所でお世話になってたんでしょ? さーやに聞いてるよ。でも、僕が来たからもう大丈夫だよ。」 握り締められてた手にまた、ウォルフはキスをする。 「え?」 「青桐相馬さん、うちの翼がお世話になりました。 荷物は明日にも取りに行きますので・・・。」 ニッコリ 相馬に見せる様に、翼の指先にまたキスを落とす。 「・・・オレの大事な友人だ。当たり前だろ?」 パシっ ふぇ?な、何?? ウォルフに握られたままの翼の手を相馬が取り返す。 「翼、また泊まりに来ればいい。」   相馬の指が、翼の指に絡められる。 「う、うん。」 そのまま、相馬に軽く口付けられる。 「荷物は、後で田中に持っていかせる。」 「あ、ありがとう・・・・」 ひぃぃぃぃ・・・・。顔が良すぎる!ってか、どんな仕草も似合う!!! 『はっ! 当分お前の世話にはならないさ。』 「・・・ウォルフ?何か言った?」 「なんでもないよ! それじゃ、つーくんの家に一回戻ろか〜。」 翼の腰に手を回し、ウォルフがエスコートしてエントランスの方へと歩いていく。 その日、翼の家に食べきれない程の和牛各種が届いたのは・・・また別の話・・・

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