177 / 208

花京院(4)

「2人とも、言い争うなら他所でやってもらえるかな?」 伊集院の言葉は聞こえてないのか、2人とも収まる様子もなく睨みあっていた。 ひぃ・・・・ こっちはこっちで豹??? これ、乙女ゲームじゃなかったのか? しかし、こんなシナリオあったかな? ・・・けど・・・相馬みたいな奴とオレみたいな一般人が一緒いるのが嫌なのもいるよなぁ。 って、なんかきついんだけど・・・。 ギュウギュウに体に腕を回されていて、身動きが取れなくなっていた事にやっと翼が気がついた。 「なぁ、苦しいんだけど・・・。」 翼が腕を叩くと、ウォルフは少し腕を緩めた。 はぁ・・・。 「なんだか、訳がわからないけど・・・。とりあえず、相馬、オレは大丈夫だよ。あの先輩が何かしてきても、オレは相馬と離れる気ないよ。」 ウォルフの腕の間から、翼が相馬に手を伸ばす。 相馬が翼の手を握ると、ウォルフが一瞬強く抱きしめたが・・・、すぐに力を緩めた。 「はぁ・・・。君たちなら、もう誰がやったかわかってるんだろ?」 ウォルフが相馬と伊集院に聞く。 その問いに答えたのは伊集院だった。 「ああ、もちろん。」 トントントン・・ リズムよく包丁の音がキッチンにい響く。きゅうりの輪切りがまな板の上を色どる。 それを前から覗きながらウォルフが話かける。 「ねぇ、つーくん。本当に明日は相馬の車で学校行くの?」 「今日は、お前と行って、水かけられたなら相馬と行ったらどうなるかな?って思ってさ。」 「それって危なくない?」 「さぁ・・・? けど、今回の事はシナリオには全く関係ないと思うから・・・。」 「・・・そうなの?」 「ああ、関係ないと思う。」 「・・・、自信ある感じだね? 何か根拠でもあるのかな?」 手前から、手を伸ばし飾り付けられたきゅうりを一つ摘むと、翼に叩かれる。 今度はボールに卵を割り、解き始める。 「つまみ食いすんなよ。 多分だけどね。」 そう言って、翼はフライパンに卵を入れた。 「今日のディナーは何?」 「オムライスとサラダに・・・相馬のとこから貰った肉だな。」 翼の後で、冷蔵庫から、出した肉が艶々とその存在をアピールしていた ♪♪♪ 「H i 。さーや? つーくんお風呂に入ったから、連絡したよ〜。」 「 ・・・はぁ、ウォルフ。こっちはもうすぐ消灯だから、用事ならメールにして。」 「あ、待って! 翼の事だから。」 ウォルフの声を聞くなり、切ろうとした咲紀に慌てて用件を言った。 「・・・おにぃが、どうかしたの?」 「ねぇ、さーや。僕がここに来る事はシナリオ通りなのかな?」 「・・・ウォルフは、攻略対象じゃないって言ったでしょ? それより、おにぃがどうかしたの?」 「そう・・・。 今日、翼が先輩?に水かけられたんだけど」 「え? 何それ! 怪我は?!!」 「ないけど・・・。」 「そっか・・・。けど、そんなシナリオないと思ったんだけど・・・。」 「そうなんだ・・・。なら、僕が何かしても大丈夫?」 そう聞いて、咲紀が無言になった。 「・・・さーや?」 あまりにも長い沈黙に、ウォルフが聞き返した。 「ウォルフに任せるよ・・・。おにぃが怪我しない様に見守ってあげて・・・。」 「ああ、わかった・・・。」 ガチャ 「あれ? ウォルフ。何、電話してたのか?」 頭を乾かしながら、翼がリビングに水を飲みに入ってきた。 「あ・・・うん。ちょっとね・・・。」 そう言って、ウォルフは携帯を握りしめた。

ともだちにシェアしよう!