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それぞれの想い(花京院 (5) )

「あなたは攻略対象外」 いつも、咲紀に言われていた言葉。 翼も誰も結局オレを見ないんだったら何をしてもいいよな? コンコン 「相馬様、お茶をお持ちしました。」 「田中、一体何があった?」 「こちらが、報告書になります。」 「内容は?」 「はい・・・。どうやら、今回ご実家の企業にとある財団が多額の寄付と、合併の話が出た様です。その事で、お兄様の所にも打診があった様です。」 「・・・兄の所に?」 「はい。」 「と言うことは・・・製薬会社か?」 「そうなりますね・・・。」 「わかった。ありがとう。今日はもういい。」 相馬の言葉に、一礼して部屋を出て行った。 「・・・・あいつ一体何を考えているんだ?」 椅子に座りながら、用意されたお茶を飲んだ。 『相馬と離れる気はない』 気がついたらそう答えていた。 相馬を好きだと認めた時から、何があっても相馬から離れないと決めた。 朝比奈と相馬が、もし結ばれても友人としてずっと入れる様に。 オレに、その資格があるかないか・・・それは、相馬が決める事。  その気持ちはもう、揺るがない。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「君たちなら、もう誰がやったかわかってるんだろ?」 「ああ、もちろん」 そう言った伊集院に、翼が続けた。 「伊集院先輩、相馬、ウォルフ。 オレは大丈夫だから、3人は何もしないでほしい。」 「・・・どうしてだい?」 「そうだよ、つーくん!! こいつの所為だったら、さっさと片付けたら良いじゃん」 驚く先輩とウォルフだったが、翼は気にすることなく続けた。 「水を掛けられただけだよ? 何度も言うけど、オレは大丈夫だから。」 「・・・わかった。ただ、君にこれ以上危害を加える様だったら、生徒会(ボク達)も行動に移すからね。」 「・・・伊集院先輩。ありがとうございます。」 「君には借りがあるからね。これで返せれば、ラッキーって感じだよ。」 少し戯けて見せた伊集院に翼もやっと笑顔を見せた。 「って、言われたんだよね。」 2人掛けのソファーで隣にいる男に、伊集院がもたれかかりながら炭酸の入ったグラスを傾ける。 「へー、あいつらしいな。」 トレードマークのメガネはなく、髪も上げられて紫の瞳が楽しそうに細められる。 「で? このまま、何もしないで見守るのか?」 伊集院の顔を覗き込みながら、見つめグラスをその手から取り上げる。 そのまま。男の唇が伊集院の唇に重なる。 チュッと軽い音を立てて離れる。 「まさか。 僕たちのキューピットに借りは返すつもりだよ。」 「それは・・・、俺も賛成だな。」 そう言って、ニヤリと笑うと男の首に伊集院の腕が伸びる そのまま、男が抱き上げベットルームへ横抱きに連れて行く。

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