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花京院(6)
ピーンポーンピーンポーン
「はーい! ほら、ウォルフ行くぞ!」
ドアを開けると、田中さんが迎えに来ていた。
「翼様、おはようございます。」
「田中さん、おはようございます。 ウォルフまで乗せてもらって、すいません。」
「いいえ、相馬様からのご指示ですので。」
「だって! ほら、ウォルフも行くよ!!」
「はいはい。今日はよろしくね。」
田中も軽くウォルフに一礼する。
ウォルフは、それに手をあげ答える程度で、そのままカバンを田中に渡す。田中も受け取り、そのまま歩き出す。
一部始終見ていた翼は、その態度に少し反感を持ってしまった。
あとで、注意だな・・・。
学校の門の前で降りると、周りの生徒たちが遠巻きに見てるのがわかった。
・・・昨日の今日だもんなぁ・・・。仕方ないか。
少しがっかりした気分になって、思わず下を向いてしまう。
ポン
「ほら、教室いこ。」
相馬の手が翼の頭をそのまま撫でる。
「あ、うん。 そうだな。」
「相馬様、こちらをどうぞお持ちください。」
そう言って、田中が大きな四角い包みを手渡す。
「随分、今日は大きな。」
「はい。本日はウォルフ様の分もご用意させて頂いております。」
「え!!田中さん、ウォルフの分まで!?」
「僭越ながらご用意させて戴きました。ですので、本日は食堂では無くこちらをぜひご賞味くださいませ。」
「嬉しいです! 田中さんのご飯楽しみに、今日は頑張ります!!」
「はい。行ってらっしゃいませ。」
深々とお辞儀をして見送る田中に手を振りながら門の中に入っていく。
先に歩いていた相馬とウォルフに早歩きで追いつこうとすると、後ろから誰かがぶつかる。
えっ・・・
ぶつかってきた生徒は走って行ってしまい、もう背中が見えなくなっていた。
「・・・翼? どうかした?」
「つーくん?」
2人が振り返る
「いや・・・何でもない。」
「そう? ほら、行こ?」
そう言って、相馬が手を差し出す。
その手を、横からウォルフがはたき落す。
「つーくん、僕が手引いてあげるよ?」
ウォルフが今度は、相馬の代わりに手を差し出す。
「いや、大丈夫だから。 ほら、2人とも行こ!」
下駄箱で、上履きに履き替えてる時に、通りすがりに翼にだけ聞こえる声で
誰かに嫌味を言われた。
「王子、侍らかすとか・・・何様だよ。」
ドン
「え・・・?」
履き替てる途中に後から押され、前のめりで転けそうになる。
ウォルフが気が付き、抱きとめたから顔面から転ぶのは免れた。
「・・・大丈夫?つーくん、意外と鈍臭いよね。」
「え・・・あ、うん。サンキュー。」
・・・今、押された?
「あ、2人とも・・・オレ、これ生徒会の冷蔵庫に入れてくるから、先に教室行ってて。」
「・・・解った。」
そう言って、ウォルフと翼は教室、相馬は生徒会室へと向かった。
廊下を曲がると、相馬の足が止まる。
そのまま、後からきた人物に話かけられる。
「はぁ・・・、さっきのは昨日の件と関係あるのかな?」
「ああ。」
「そう。可愛い後輩の為だし、了解したけど・・・。危ないと思ったら、僕は止めに入るからね。」
「・・・それで良い。」
そう言い残すと、そのまま生徒会室へ相馬は再び歩き始めた。
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