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花京院(7)
教室に向かう途中。
翼は気になったことを、ウォルフに言った。
「・・・ウォルフ、何でさっき、田中さんにカバン渡したんだ?」
「 ? 彼は、執事だろ?」
「・・・そうだけど・・・、お前のじゃないだろ?」
「そうだけど、執事の仕事じゃないのか?仕事を与えて何が悪いの?」
「・・・そうだけど。」
ウォルフは間違っていない。けど・・・何だか、もやもやする。何でだろう。
自分の前で、相馬も朝比奈達も田中さん達にこんなに偉そうな態度を取っていなかった。
主人である、相馬も翼の前では田中に命令をしない。むしろ、田中が相馬を嗜めたりする事の方が多かった。
ウォルフは生まれながらの王だった。
祖父と父親が、継承権を辞退しているとはいえ、ウォルフの王位継承権は順位が低いとはいえ生きていた。その為、幼い頃から王になるべくして育てられていた。
周りの人間は自分に仕えて当然だった。
オレ達とはじめて出会った時も、ウォルフは沢山の人が側にいた。
だからそんな態度を取るのも仕方ないのかも知れないけど・・・。
「・・・オレの前で、それはやめてほしい。」
「・・・そう? 別にいいけど・・・。」
並んで歩いて教室に行くと、相馬はもう席についていた。
「相馬の方が早かったんだ・・・。」
「ついさっきだよ・・・。」
「そっか。 お昼楽しみだな。」
そう言って、翼が相馬に微笑んだ。
「!!」
「つーくん、先生くるよ。早く座ろ!」
「うわっ・・・ちょ、ウォルフ苦しいって。」
後からウォルフに抱きつかれ、そのまま席まで連れて行かれる。
ガラッ・・・
教室に入ってきた教師がびっくりするほど、一年A組は冷えていた・・・。
「な、何だ、この教室!! さ、寒すぎるぞ、エアコンの温度いじったのか?!」
3名の生徒を除くクラスメイトの視線が一点に集中した事に、先生は気がつかなかった。
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