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花京院(8)
昼休みを告げる鐘がなる
生徒会室で田中の用意してくれた包みをあける。
豪華な5段重ねの重箱。
「おぉ・・・豪華!」
「本当、いつ見ても田中さんの作るご飯って美味しそうだよね。」
黄瀬と、朝比奈が田中の作った重箱の中身に感心する。
「相馬の所にいた時のご飯も美味しかったよ!」
「翼の使ってた部屋、そのままだしいつでも泊まりにくればいい。」
そう言って相馬は、翼の頭を撫でる。
「そうだな。また休みの時とか、料理も習いたいし。」
((そ、それは・・・花嫁修行・・・?))
ニッコリ
「それはいいね。翼のご飯も美味しいから、オレは嬉しいし。」
「はぁ?! つーくんに使用人みたいな事させてたのかよ!」
黙って聞いていたウォルフが、話に割って入ってきた。
「・・・えーっと・・、ハルとリョウはホテルでちょっと会った位だっけ・・・?」
「確か、留学生の・・・」
「どこぞの公爵様だろ? それが何でここに?」
「・・・オレの幼なじみの、ウォルフ。」
その言葉に、2人の顔が一瞬固まる。
「2人とも、よろしく。」
ウォルフが他所行きの顔して微笑む。
その笑顔に、朝比奈も黄瀬もドキッとしてしまう。
「・・・ん?翼君と幼なじみって・・まさか?」
「あぁ、オレの親父がウォルフの父親とこの学園の同級生だったんだよ。」
「ここの卒業生なの!?」
朝比奈も黄瀬もびっくりしたが、気にせず翼は重箱の蓋を開けた。
「まぁ、父さんはつーくんのパパに振られた方だけどね。」
「えっ・・・あの伝説の失敗者?!」
ウォルフの言葉に思わず、黄瀬が反応した。
「あー、それは成功なんじゃないかな??」
ま、まさか・・・こんなところで、親の馴れ初めを・・・しかも、幼なじみに聞くとか・・・。
「けど、あの伝説って本当に効果あるの? 卒業式じゃなきゃ意味無いのかね?」
「あー、それどうなんだろうぁ・・・。」
「僕の聞いた話じゃ、効果は無いらしいから・・・。付き合ってるカップルも、卒業の時にもう一度告白するとか・・・」
し、知らなかった・・・・。
ファンブックにもそんな事、書いてなかったし・・・。
「・・・つーくん?どうかした?」
隣にいたウォルフに、頬を突っつかれる。
「何でも無いよ。」
「本当に?」
「ああ、何でも無いよ。」
つい、昔の癖でウォルフの頭を撫でる。昔は、ふわふわだったのが、今はワックスでセットされていた。
「ちょ・・。セット崩れるし、手汚れる。」
撫でていた手をつかんで、指先にキスする。
「「「!!」」」
「はぁ・・・。それ、止めろって。」
翼は、ため息を着きながら、包みの中に入ってたおしぼりで手を拭いた。
「それ、ちょっと酷くない? 傷つくんだけど〜。」
そう言って、ほっぺにキスする。
「だから、そういうのも止めろって・・・。」
バン
「そうだな。ここは公共の場という事を覚えておいた方がいい。」
終始無言だった、相馬が箸をテーブルに叩きつける様に置いた。
「ちょ!! 相馬!」
「あ、オイ!! 相馬、ハル!!」
出て行った相馬の後を、朝比奈と黄瀬が追いかける。
「何、アレ。感じ悪ッ」
「はぁ・・・、ウォルフ。お前も、公爵としてこっちに来てるなら、相馬の言う通りだぞ? 学園内とはいえ、公共の場で昔みたいに振る舞うのは駄目だろ。」
「別に、そんなの関係なく、つーくんにしたいからしてるんだけど?」
「ウォルフ・・・。」
「言ったよね? 翼の運命の相手は僕だって。」
「・・・オレもその事については言ったよな?」
無言で見つめ合う。
その様子を、ドアの外で見ていた人物に2人は気がつかなかった。
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