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付き人の名前はまだない。(花京院(11))
「・・・そっか。わかった。」
そう静かにウォルフは答え、手に持っていた紙皿をテーブルに置いた。
「もう、いいのか?」
「うん。ちょっと、中庭で気分転換してくる・・・。」
「・・・わかった。」
部室を静かに出て行く、ウォルフの背中に翼は、掛ける言葉はなかった。
その頃の生徒会では・・・・
はぁ・・・。
「「・・・・」」
はぁ・・・・。
何度目かのため息の後、ついに、耐えられなくなった朝比奈が文句を言った。
「あーーーーもう!! 相馬!!鬱陶しい! せっかくの食事も不味くなるから、それやめろ!!」
「・・・うるさい。」
「2人とも落ち着けって・・・。相馬は、翼にお願いされたんだろ?」
「・・・そうだよ。だから、何もしないでいるんじゃないか。」
不貞腐れながら、弁当の隅を突っつく。
家まで送ったあの日、帰り際に翼に頼まれたのだ。
翼に頼まれたから、大人しく今はしているけど・・・。
そろそろ、相手が調子に乗って来ているのが気になった。それは、この2人も同じ気持ちだった。
校内で、翼に対する嫌がらせの実行犯が誰なのかはもうわかっているが・・・、そいつだけ排除したところで、あの先輩が何をするのか予想できなかった。
「けど・・・、そろそろ限界なんだよね。」
その言葉に、2人も何も言わなかったが同じ気持ちだった。
「薫様、本日は如何なさいますか?」
「そーだなぁ〜、泥団子も飽きたし。水も飽きたしなぁ・・・。虫とか今度はどうだ?弁当とかに虫入れてさぁ〜。」
「・・・そうですね・・・。それは少し難しいかも知れませんねぇ・・・。青桐家の執事が、昼食をご用意している様ですので、さすがに青桐家を怒らせる様なことは・・・。」
「はぁ? そんなの、うちがロイヤルファミリー入りしたら関係ないだろ?」
「では、どの様な虫になさいますか?」
「そんなのお前が考えろよ!!僕は、ロイヤルファミリーだぞ!!」
「・・・・。」
ああ、またミニゴリラが・・・。飼育員に私はなった訳ではないんだけどなぁ。
部室に忍びこむ事は難しくない。
花京院の使用人である自分を知らない教師はいないし、学園内にいてもいつもの事と学園側も容認していた。
まだ、授業中の校内を堂々と歩いていると、用務員とすれ違う。
「おや? また、花京院くんは忘れ物ですか?」
「いつも、ご迷惑をおかけします。」
「いやいや・・・。オタクさんも毎回、ご苦労様ですな。」
けれど、今回は違った。
部室内へ入ると、冷蔵庫の中に目当ての物をすぐに発見できた。
が・・・
どうやら、今回は失敗の様です。
「・・・何しているんですか?」
ドアの方から、声をかけられる。手に持っていた物をポケットにしまい、振り向くと意外な人物に少し驚いた。
「これはこれは、青桐家の執事さん。」
ニッコリ
「花京院家の付き人がこんな所で何をしているんですか? それは、翼様の昼食ですが?」
手に持っていた包みを、田中が指差しながら間合いを詰めてくる。
これは、今回は逃げるが勝ちというやつだな。
「ああ。そうなんですね。 うちのおぼっちゃまが、何処かに弁当を忘れたと言いましてね。
どうやら、こちらは違った様ですね。」
田中に手に持っていた包みを渡し、さっさと部屋から出て行こうとするが、田中に止められる。
「・・何か?」
「そちらの、手に持った物も、こちらで引き取りますよ。」
掴まれた手に力が込められる。
「・・・はぁ。なんの事ですか?」
「それが通じると?」
「ですよね。 まぁ、今回のはあまりにも幼稚だったんで。」
そう言って、掴まれた手にポケットの中身を握らせ、部屋を出て行った。
「はぁ?で、お前はすごすご帰ってきた訳?使えねぇな〜。この僕が、ロイヤルになったらお前みたいなのは要らないな。」
「・・・。」
終始、無言で花京院の話を聞いている。
ベラベラ、ホントこのミニゴリラは良く喋るな。ウホウホ・・・ウホウホ。
「もう、お前いいいや。 僕が、直接あの時みたいにやるから。」
「・・・かしこまりました。」
「かしこまんなくっていいって。お前、クビね!!」
偉そうに鼻の穴を広げながら、ふんぞりかえる姿は、ドラミングかな?
なんか、疲れたわ。
静かに一礼し、その場から出て行く。
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