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花京院(12)
「ゲッ!! 嘘だろ?!」
こっち来る!!
ドンッ
部屋を出てくる前に移動しようとしたが、腕を掴まれてしまう。
部屋の中では、まだ花京院が興奮して暴れてる。
壁側に追い込まれ、微笑まれる。
「ああ、探す手間が省けた・・・。」
「・・・え? それって・・・・」
はぁ・・・。さすがに、うんざりしてきた。
今日は、更衣室のロッカーの中身がケッチャプ塗れになってた。
「・・・酷いな。手伝うよ。」
ロッカーを片付けてると、相馬が手伝ってくれる。
「あ、ありがと。 なんか、トマトに申し訳なく思うわ。」
ため息まじりに、ロッカーの中の大量のケチャップを見て思わずそう口にしていた。
「プッ。翼は面白いな。 まだ、オレは何もしない方が良いんだよな?」
「・・・、うん。 ありがとう。 オレ、雑巾洗ってくる。」
「・・・ああ。」
バケツを持って、手洗い場に走っていく翼の背中を見送る。
「・・・何か用か?」
翼が走って行った逆側から、こっちを伺っていた人物に声をかけ
出てきた人物に一瞬、びっくりしたがすぐに相馬の口元には笑みが浮かんでいた。
はぁ・・・。
何度目か判らないため息が出る。
雑巾を水で洗うが、落ちない。
はぁ・・・。
「つーくん、それどうしたの?」
「あ、ウォルフ。今度は、ケチャップらしいわ。」
あの日から、ウォルフはホテルから学園にくる様になった。
元々、ホテルは用意してあったらしいけど。こうやって、話をするのは三日ぶりだった。
「・・・そんな事されても平気なの?」
「・・・平気では無いよ? けど、これが理由で相馬と友達やめるのもおかしいだろ?」
「・・・僕とは友達にもなってくれないのに?」
「ウォルフ?何言ってるんだ?」
洗っていた、雑巾を置いて、ウォルフに近寄る。
一歩ずつ、近づくと一歩づつ、ウォルフが後ろに下がる。
「ウォルフ?」
「・・・何?」
「・・・何って・・何で逃げてくんだ?」
「・・・何で、追いかけてくるの?」
「それは・・・、お前が逃げるから・・・。」
だんだんとウォルフの逃げる速度が速くなる。
遂には走り出してしまう。
「ちょっと!!ウォルフ!!待って・・・」
走って走って気がついたら、上級生のフロアに来ていた。
「花京院くん、聞いた?」
「あの子のロッカー、すごかったらしいね!!」
「あはは。僕にかかればあんなもん屁でも無いし。」
「あ、あれって・・・あの子じゃんない?」
「ホントだ。こんな所までくるなんて・・・ちょっと懲らしめてやろうか。」
階段の踊り場で、ウォルフを捕まえる。
「良い加減位しろって! どうしたんだよ。ウォルフ!!!」
「・・・、つーくんが、追いかけてくるから。つい・・・。」
「何、言ってんだよ。そりゃ、追いかけるだろ。」
「・・・そっか。」
ウォルフの顔から、険しさが緩んだ。
その瞬間、翼とウォルフの後ろに人影が現れる。
「つ、つーくん!!」
「え?」
ドン!!
「あ!! ごめん! ぶつかっちゃった!!!!」
「う、うわ!!!!!!」
「つーくん!! 」
階段でバランスを崩し、そのまま落ちそうになった翼を咄嗟にウォルフが抱きしめる。
そのまま、転がり落ちる。
「うわー、そんな奴助けるとか・・・。」
「ちょ!!花京院くん!!」
「や、やっばいよ!! あの留学生、公爵様って・・」
「はぁ? 何それ! 僕はロイヤルだよ? それよりも偉いやつなんかいないだろ!!」
「け、けど・・・」「僕たちは何も関係ないからね!!!」
花京院を取り巻いていた生徒達が走って逃げた。
その騒ぎに、授業へ向かう途中だった黒井が通りかかった。
「おい!お前、何してるんだ?」
「別に、あいつらが階段から落ちたみたいですよ。」
「・・・な・・・何だと?!」
階段下で倒れてる、2人を見て慌てて胸ポケットの携帯を取り出す。
急いで駆け寄る。
「お、おい・・・大丈夫か?」
ウォルフの腕の中から、翼が身じろぐ。
「は、はい・・・。オレより・・ウォルフがが・・・。」
「おい!おい!!」
ぐったりと動かないウォルフに、血の気がひいていく・・・。
その様子に、階段の上で花京院が騒ぐ。
「僕は何もしてないから!!!!!!!!そいつが勝手に落ちたんだ!!」
その叫び声を聞きいた瞬間、翼は階段を駆け上がって花京院を殴っていた。
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