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花京院(ラスト)

「・・・中、入らないのか?」 後ろから声をかけられ思わず叫びそうになったのを手で押さえ、何とか踏みとどまる。 「・・・相馬?」 「・・・怪我、大丈夫だったか?」 頭から、足まで相馬の視線を感じる。 「大丈夫だよ。ウォルフが庇ってくれたから。」 「そっか・・・。」 相馬の手が、翼の頭を撫でる。 この数日、ずっと考えてたいた。相馬とオレが釣り合わない事なんて、最初からわかり切った事なのに・・・。 それでも、一緒にいたいと思う・・・それなら、オレが釣り合うようになれば良い。 「・・・相馬、オレ・・・。」 ガラッ 「おにぃ。 ウォルフ起きた・・・って、相馬さん?」 「ああ、色々報告にきたんだけど・・・。大丈夫かな?」    「多分・・・。そしたら、おにぃとわたしはちょっと飲み物買いに行ってきます。」 咲紀に手を引っ張られ、売店の方へと連れて行かれる。 「ちょっ・・・咲紀!! 引っ張りすぎだって。」 「ご、ごめん・・・。」 「少し、座ろうか。」 中庭のベンチに並んで座った。 自動販売機で買った飲み物を手渡した 「仲直り出来たみたいだな・・・。」 「別に喧嘩してないけど。」 「でも、良かったな。」 翼にそう言われて、どちらとも無く微笑んだ。 「もう、起きて平気なのか?」  ベットの上で、窓の外を眺めていたウォルフに相馬が声をかけた。 頭に巻かれた包帯が痛々しく見たが、目立った外傷がなかった事は良かったと心から相馬は思った。 「ああ、お前には迷惑かけたな。」 「・・・何だ、やけに素直だな?」 「まぁ・・・。もう、気が済んだしな。」 「そうか・・・。」 ガラッ!! 「ウォルフ!相馬! 飲み物買ってきたけど・・・」 「ちょっと!!おにぃ・・・!」 勢いよくドアを開け中に入っていくと、相馬とウォルフが穏やかに談笑している様子にびっくりしたが、ウォルフの顔を見て・・・少し、嬉しくなった。 「そうやってると、ウォルフも年相応に見えるな。」 「確かに〜。 いつも、ウォルフってば大人ぶるもんね。」 「!! ちょっと、さーや!それって、どう言う意味だよ。」 PPPP 相馬の携帯が鳴り慌てて、相馬は病室の外に出る。 「・・・はい。 ああ、わかった。」 携帯を胸ポケットにしまい、目の前の古狸に向き合った。 「すいませんね。ちょっと、部下からの急ぎの連絡だったもので・・・」 「いやいや、構いませんよ。今日は、あの秘書は一緒では無いんですな。もう一度、お会いしたかったのですがなぁ・・・」 「・・・随分と、うちの秘書を気に入ったようで・・・。所で、御子息の通われてる学園に私の息子が交換留学生として通ってるんですけどね・・・。」 「ほぅ、それはそれは!! 是非とも、仲良くさせて頂けたら・・・」 「そうですね・・・そうであれば、良かったんですけどね。」 バッサッ 机の上に、写真と書類がばら撒かれる 「こ・・・これは?」 「残念です。 良い取引が出来なくて。」 「なっ・・・!!」 バンッ!!!  勢いよくドアが蹴り破られ、中に黒づくめの男達が入ってくる。 「警察だ!!! 動くな!」 「な!! 何だと!? こ、これは一体!!!」 「花京院さん、残念です。」 宗教画の様な微笑みはまるで、地獄の底の番人の様だった。 「ただいまぁ〜!! 誰かいないのか?」 家に着くと、いつもの迎えが無かった事に、少し違和感を覚えたが花京院は特に気にしなかった。 「お母様? いらっしゃらないのですか? お母様〜?」 ガチャ・・ 「あ、お母様! ・・・お前、クビにしたはず・・・?」 ダイニングで、青白い顔をした母親とその横に立っている男の顔にやっと異変を感じた、花京院が首を傾げながら自分が昨日首にした男みる。 その視線に応える用意、母に一枚の紙を差し出す。 「ああ、だから私の仕事をしにきました。」 「な・・何だと?」 その紙を読んだ母が叫んだ 「薫!!!!! あなた一体何をしたのよ!!!!!!もう、お仕舞いよ!! お父様は逮捕されて、この家も出て行かなければならないのよ!!!!!!!!」 「な!! 何で、僕はロイヤルファミリーになれるって!!!」 「何を馬鹿な事を言ってるのよ!!」 パン!!!!! 思いっきり母親が、花京院の頬を叩いた。 「!! おかぁさ・・・ま?」 「あなたが、階段から突き落とした方が公爵様だったのに・・・。そればかりか・・・・。」 「はぁ、親子揃ってゴリラかよ・・・。 本日、0時までに退去する様に。期限が守れない様なら、 強制的に排除させて戴きます。」 泣き崩れる母を尻目に、最終通告を元付き人だった男は2人につげその場を後にした。

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