188 / 208
すき焼き食べたい
「・・・そうか。わかった。」
通話を終えた相馬のところに、翼が迎えにきた。
「あ、あれ? 咲紀ちゃんは?」
「あ、寮の門限があるから・・先に帰った。」
「そっか。 翼は、もうお見舞いいいの?」
「うん。あ、あのさ・・・。オレ、相馬に話があるんだけど・・・。」
この選択が、今後どうなるのかわからないけど、自分に自信を持ちたい。
相馬の隣にいられる様に、自分が変わらないと・・・。
病室で、咲紀が帰った後ウォルフにも同じ事を伝えた。
案の定、ウォルフには心配されたけど・・・
「つーくんが決めたんだったら、良いんじゃないかな? それが、シナリオと違ってもさ・・・。僕は、つーくんの味方なのは変わらないよ。」
「ウォルフ・・・。」
「あーあ、僕のモノにしたかったのになぁ。残念!!」
「バーカ。 ってか、おまえ咲紀にベタ惚れなんだから、いい加減にしろよ。」
「・・・だって、さーやは僕を見てくれ無かったんだもん。」
「オレも、ウォルフが怪我したり死んだりするのは嫌だからな・・・。無茶はするなよ。」
「ふふ・・・、つーくんお兄さんだね。約束するよ。お詫びじゃないけど・・・、つーくんに一つ教えてあげるね。」
そう言って、ウォルフは翼に耳打ちをした。
「・・・え。ウォルフ、それって。」
にこっ
「後は、つーくん次第。 頑張って。」
何度と見た、ウォルフのプリンススマイル。
あの顔の時は、何を聞いても無駄か・・・。
「・・・じゃ、また明日来るから。」
「うん。楽しみにしてる。」
病室を出たときのウォルフの顔に後ろ髪惹かれつつ、相馬のところへ向かったのだけど・・・。
おかしい・・・。
さっき、話があるって言ったはずなのに・・・。
何で、目の前にすき焼きが????
「翼様、どうぞたくさん召し上がってください。」
「は、はい。 ありがとうございます。」
生き生きと、田中がお肉を入れてくる。
すき焼きなのに、わんこそば状態に翼の胃が悲鳴を上げ始める。
「田中・・、翼の腹がはち切れるぞ・・・。」
「!!! これはこれは・・・今、お茶をお持ちします。」
席を外した田中さんの代わりに今度は、相馬が翼のお椀に肉を入れる。
「ちょ・・・相馬!! もう、食べれないって!!!」
「あ、ごめん。」
さっきからずっと、相馬の顔がニコニコご機嫌で調子が狂う。
「あ、あのさ・・・、相馬。オレ、生徒会に入りたい!」
「・・・えっ? ・・・それは、どうして?」
「・・・オレ、今回の事で思ったんだ。釣り合う、釣り合わないじゃないけど・・・、相馬の友達として自分に自信を持ちたい。それに、相馬の隣にいても文句を言われない男になりたいって・・・。」
「・・・翼。」
「っても、オレにできる事なんて限られてるとは思うんだけどさ・・・。」
「そんな事ないよ。翼が生徒会に入ってくれるなら、オレは嬉しい。」
「それなら・・・よかった。明日、伊集院先輩に話してくる。」
「なら、明日は3人でまた昼食べれるな。」
「そうだね。やっとゆっくり、お昼食べれるの嬉しいかも・・・。」
昼食の話をしていたら、食欲が復活したのか残りのすき焼きも完食した。
コンコン
「失礼します。 相馬様、よろしければ、こちらをどうぞ。」
PCの前にいた相馬に声をかけ、部屋のテーブルに田中が水と錠剤を持ってきた。
「・・・。あれは、作りすぎだ。」
「・・・申し訳ありません。つい・・・。」
申し訳なさそうな表情など一切していない田中の顔を見たら、それ以上は何も相馬は言わずに、持ってきた薬を飲んだ。
ともだちにシェアしよう!