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病室

「ヤァ、朝比奈さんだっけ?」 頭に包帯をしてベットの上で上体を起こしたウォルフが翼と朝比奈を見て声をかけた。 「ああ、覚えててくれたんだ?」 「もちろん、つーくんの友達だもの。今日は、つーくんとお見舞いありがとう。」 さっきから、ウォルフの顔が笑顔で固定している。 静止画か???そんな事を考えながら、翼が朝比奈を連れてきた理由を伝えるとウォルフがいつもの顔になる。 「この後、一緒に宿題をしようと思って。」 ウォルフのベットサイドの椅子に翼と朝比奈が2人で座る。 「そうなんだ。あーあ、僕もつーくんと一緒にもっと授業受けたかったなぁ。」 「まぁ・・・その怪我じゃ、仕方ないんじゃない?」 「つーくん!酷い〜。つーくんを庇ったのに〜、酷い〜酷い〜」 肌掛けをぱふぱふ両手で叩きながら翼に抗議するウォルフにびっくりする。 「・・・なんか、噂と違って随分と子供っぽいんだね。」 思わず朝比奈がそう言うと、翼もウォルフも一瞬言葉を失った。 先に反応したのは、ここまで連れてきた黒服だった。 ウォルフが黒服をひと睨みすると、小さく頭を下げ病室を出て行った。 「まぁ、ハルの言う通りかも。ウォルフだって、まだ14だっけ?」 「もう、15になるよ!」 「ってことは、まだ14・・・? 中学生じゃ・・・?」 その事に、朝比奈は緊張も忘れて素で驚いてしまう。 翼自身も、朝比奈の気持ちは痛いほどわかった。自分よりもデカイこの男が、自分よりも年下ってのは・・・認めたくないよなぁ。 「って、・・・ハル。こいつ飛び級してるから・・・。」 「えええ・・・! けど・・そっか・・・。じゃないと、同じ学年にいないか。」 マジマジとハルがウォルフを見ると、ちょっと居心地悪そうにウォルフがする。 ・・・こんなウォルフ初めて見たかも・・・。 「ちょっと、見過ぎだから!!」 顔を赤くしながら、ウォルフが拗ねたように朝比奈に文句をいう。 「・・・なんか、そんなウォルフ新鮮なんだけど・・・。」 「つーくんまで ?!! 怒るよ!!」 「ふふ、なんか噂と違うんだね。」 クスクスと笑う朝比奈に照れた様子でウォルフが、翼にわがままを言う。 「もー、つーくん僕、喉乾いた!!何か買って来て!!」 「あ、僕が行ってくるけど?」 「いいよ! ハルはここにいてよ。オレが連れて来たんだし。 ウォルフも、ハルの事困らせんなよ。」 そう言って、朝比奈を椅子に座らせ、翼は病室を出ていった。 出ていったのを見届けると、ウォルフの雰囲気が変わる。 「・・・で、僕の噂ってどんなのがあるのかな?」 朝比奈もいつもの猫が一匹・・・二匹剥がれる。 「ふーん。 そんな顔もできるんだ。噂通りだね。」 「そんな顔って・・・イケメンだろ?」 戯けた風に言うウォルフに対して、一瞬言葉を失いかけたが すぐに、いつもの調子で朝比奈も応戦する。 「あはは。自信家で野心持ちのおぼっちゃまか・・・、僕は嫌いじゃないけどね。」 ニッコリ エンジェルスマイルで答えれば、今度はウォルフが呆気に取られたが、ウォルフも負けていなかった。 「さすが、・・・主人公様か。」 プリンススマイルで答える。 確かに、その顔は良いけど、翼ほどでは無いな・・・・。 「え? それって、どう言う意味?」 「さぁ? 所で・・・、朝比奈さんは、病院にはちゃんと行ってるのかな?」 ウォルフの表情は変わらない。 「・・・なんの事かな?」 なるほどね。本当、噂通り、食えないガキって事ね・・・。 朝比奈とウォルフの視線がぶつかるが、お互い目を逸らそうとしなかった。 「2人とも〜、適当に買って来たけど・・・って、何かあった?」 翼がドアを開けると、2人が見つめあっている様にも見え、びっくりする。 先に、いつもの様子で答えたのはウォルフだった。 「つーくん、ありがとう! もちろん、朝比奈さんと仲良くしてたよ〜。」 「本当に? ハルも、大丈夫だった?ウォルフに嫌な事とか言われてない?」 2人に飲み物を渡しながら、朝比奈の隣に翼も座って飲み物の蓋を開ける。 「だ・・・大丈夫だよ、翼くん。仲良くさせて貰ってたよ。」 「・・・それならいいけど。」 ウォルフと朝比奈の2人を見比べる。2人共、ニコニコと笑いながら翼の買ってきた飲み物を飲んでいた。  ってか・・・、朝比奈を連れて来たけど、攻略対象外のウォルフと主人公の朝比奈ってシナリオ的に問題無かったかな? なんか、相馬より読めない2人だよなぁ。笑顔がそうさせるのか? そんな事を考えていると、朝比奈がトイレに席を立った。 「翼くん、僕ちょっとトイレに行ってきても良いかな?」 そう言って、朝比奈が部屋を出て行った。病室に2人っきりになると翼が気になっていた事をウォルフに問い詰めた。

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