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ウォルフと翼

「・・・やっぱり、なんか言ったんだろ?」 「えー何それ、僕を疑うの?」 「ウォルフ。ハルの事もだけど・・・、リョウの怪我のタイミングがシナリオより、早くなりそうなんだ・・・。何か知っているんじゃ無いのか?」 ウォルフの顔を真っ直ぐに見る。 「酷いな〜。僕の事、信じてくれないの?」 ・・・だから、この顔。何か知ってても教えてくれないってか・・・。 「なら、こないだ言ってた事は、本当か?」 「はぁ〜。だったら、本人に聞けば良かったんじゃ無いの?」 盛大なため息をつきながら、翼を見る。 ウォルフの顔付きが変わる。 「僕は、翼の味方だけど、僕の事信じてくれないなら意味ないよね?」 「・・・ウォルフ。」 信じて欲しいなら、そんな顔しなければ良いのに。 コンコン 「入って良いかな?」 朝比奈が顔を出したが、そのまま中には入らず翼ウォルフに声をかけて部屋を出ていった。 「・・・ウォルフ、オレももう行くよ。」 「つーくん、また明日。 2人を送って行け。」 朝比奈の横に立っていた、黒服の男に声をかける。 「かしこまりました。」 黒服がそう返事をし、2人を翼の家まで送って行った。 「ハル・・・お願いがあるんだけど・・・・」 「・・・何? 僕に出来ることかな?」 バックミラー越しに、翼と黒服の男の目が合う。 ミラー越しに視線を逸らす事無く、翼は話を続けた。 「生徒会に入って欲しい。」 そう言って、翼は朝比奈の手を握った。 「・・翼くん?」 朝比奈が翼の方を見るが、翼は前を向いたままだった。 ふーーん この子が、御坊ちゃまのご執着の子ね・・・。 旦那様も、彼の父親にかなりの執着だったしなぁ。 ああ、旦那様もこの子に興味持っていたんだっけ?  確かに、彼の父親は見た目は綺麗だったけど、外見だけだったら隣の赤毛の子の方が良いと思うけど・・・。御坊ちゃまは、どこが良いのかねぇ。 おおっと・・・ジロジロと見過ぎたか。 ミラー越しに目が合ってしまう。 へー その瞳は、良いね。 思わず口元が緩む こっちに来て正解だったかな?  マンションのエントランスに着くと、後部座席のドアを開ける。 「それでは明日も、本日と同じ時間にお迎えに参ります。」 「・・・わかった。ありがとう。」 「それでは、失礼致します。」 車を見送り、翼と朝比奈はマンションの中へ入って行った。 そのまま、エントランスに歩き出そうとした翼に、朝比奈が思わず声をかけた。 「・・・翼くん。僕、逃げないけど?」 そう言って、翼の手を引く 「えっ? あ・・・、ごめん!!!」 手を繋いでいた事に、今気がついた翼が朝比奈の手をパッと離す。 その様子に、思わず2人とも笑ってしまう。 「ちょっと、そんな慌てて離さなくても良いじゃん。」 「いや・・・その、つい癖で・・・ごめん。」 真っ赤になりながら、慌ててしまう。 し、しまった!!相馬とかウォルフに最近、手を繋がれる事が多かったから・・・ 普通に繋いでた!!!  部屋に入っても、顔が赤いままの翼につい朝比奈も揶揄ってしまう。 「翼くんは、そんなに癖になるくらい、相馬と手でも繋いでるのかぁ〜。」 「へっ・・・そ、そんな事は無い・・・はずだけど。」 は、恥ずかしい!! 恥ずかしすぎる!! 「ご、ごめん!そこまで、赤くなられるとこっちも恥ずかしくなるから!!!」 「と、取り合えず・・・そこ座ってて。 ちょっと着替えてくる。」 そう言って、翼は朝比奈に飲み物をだし 部屋へと急いで向かった。

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