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久々の相馬

「翼!! 良かった、まだ居た。」 校門前で、後ろから相馬に声を掛けられる。 「相馬? どうした??」 うっすら額に汗を浮かべた相馬に翼は鞄からタオルを出して手渡す。 タオルを受け取ったまま、一向に相馬が使わないから、翼が汗を拭いてあげる。 「使ってないから、安心して。」 「え……あ、ありがとう。」 「相馬、何か用だった?」 首を傾げながら聞く翼を思わず抱きしめてしまう。 「ちょ!? そ、相馬??!!! な、何!?」 「す、すまん。 つい……なんか、久々に顔をちゃんと見た気がして……」 「あはは、確かに! 今、相馬、忙しいもんな。」 「だから、一緒に帰らないか?」 「え? あ、うん……良いけど……ウォルフの所に行かないと…。」 「なら、そこまで送るから……。」 ぎゅっと力が込められて、相馬の体温が制服越しに伝わってくる。 な、何が起きてるんだ!? 急な推しの供給過多……!!!? って………相馬? 「…相馬? どうかした?」 思わず背中に手を回しながら、相馬の顔を覗く。 し、しまった!!! 顔面が強い!! 意識した途端、耳の奥で激しくドコドコドコときこえてくる。 ぁあ、やっぱり相馬の顔、カッコイイ………。 ゴホンっ! 「相馬様、翼様。 お迎えに参りました。」 !!!! 「うわぁ!!」 ドンッ 「………田中。」 「門の外に車を待たせておりますので……。」ニッコリ 「た、田中さん。ありがとうございます!!!!」 真っ赤になりながら御礼を言う翼に、微笑みながら田中が車までエスコートしようと手を取ろうとする。それを、相馬が横から掠める。 「ほら、行こう。」 「あ、うん。」 翼が田中の方をチラッと見ると、田中と目が合い、にっこりと笑みを深められた。 は、恥ずかしい…………。 ♢♢♢ 「引き継ぎ、まだかかりそうなのか?」 なんだか、緊張して隣が見れない。 いつもはどうしてたっけ?? しかも、手握られたままだし………… あれ?でも、いつもは………? 分からなくなってきた…。 ふっ 「そんな、緊張しないで? 俺もつられるから……」 繋がれた手に力が少し入る。 「翼の方は撮影の調子どう? 」 「こっちは順調だよ。 広報にも使えそうなのが何枚かあるし、あとは試合の日に……」 試合………。さっきの感じだと、やっぱり黄瀬は脚の不調を隠してるよなぁ…。 少し考え込んでしまう、翼を相馬は何も言わずにただ見つめていた。 多分、オレが何を言ってもあいつは本当の事を言わないだろうけど……オレ1人じゃ何かあった時に対処出来ない…。 けれど、こんな事を話せば………。 顔を少し上げ、相馬の方を見るとスグに目が合った。 「どうかした?」 「あ、あのさ……」 微かに震える翼の指先に力が入る。そのまま、相馬も握り返す。 その事に、何故か安心してしまった。

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