朝比奈のふんわりとしたイメージとは違い、連れて来られた部屋はモノクロで纏められていた。 思わず、黄瀬はジロジロと部屋の中を見てしまう。 大きなベットと、本棚。　ソファーと、テーブル。 必要最低限の家具に、初めて連れて来られた黄瀬は少し戸惑っていた。 「ハルの家族は？」 「あ、ここにはいないよ。」 「そうなんだ・・・。」 黄瀬は自分の視界に入る大きななベットが気になっている様だった。 「あんま、ジロジロ見ないでそこ座って。」 「す、すまん。」 ソファーに促されて座ると、リョウの足元に朝比奈がしゃがみ込む。 いつの間にか、傍には救急箱が用意されていた。 「靴下脱がすから。」 「え！！いや、自分で脱ぐって！！」・・・匂いとか大丈夫だよな？？？ 自分の足を間近に朝比奈の顔があった。 朝比奈の顔の近さに気を取られていると、急に足首を掴まれびっくりする。 「いっ・・、たぁ・・・」 「テーピングし直すから。」 手際良く、黄瀬の足にテーピングをしていく。 その手際の良さに、黄瀬が感心する。 「ほら、これで少しはマシになるんじゃないか？　ちょっと歩いてみて。」 膝をポンと叩かれた。 恐る恐る、ソファから立ち上がり一歩一歩、歩いてみる。 「あ、歩ける。　え？すご！」 その場で腿上げなどの激しい動きもしてみる。 「あんまり、無理はするなよ。あくまで、それは補助みたいなモンなんだから。」 そう言って、救急箱を片付けていた朝比奈に、黄瀬が思いっきり後ろから抱きついた。 「ちょ！！　リョウ！！　く、苦しい！！」 腕を少し叩くと緩められたが、外される事はなかった。 背中に黄瀬の体温を感じる。 朝比奈の肩に、黄瀬の頭が乗せられる。 「ハル・・・マジ、ありがとう。」 「あんまり無理すんなよ・・・。プロになるんだろ？」 「ああ。明日を繋げればあのチームなら大丈夫だから・・・」 って言ったのに、結局あの試合の後黄瀬は入院する事になった。 丁度、翼君が親元に行っている期間と重なったから、相馬に口止めをした。 口止めをする事に相馬は、一旦は異論を唱えたが最後は言わないでくれていた。 ただ、翼に心配をさせたくないから・・・。 それだけの理由で。