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休みの日にも会うなんて
俺は講義が終わってすぐに家に帰った。翔太にいろいろ聞かれたが、なんとか誤魔化した。そのうちバレそうだけど……
家に帰っても、まだ心臓はバクバクしている。これは恋心のやつじゃなくて、恐怖からくるやつだ……!
「ほんとなんなんだあいつ……」
何を言っても諦めない。正直な言葉。
これからどうすればいいんだ……ずっとつきまとわれるのか……?
「由宇、帰るの早いな」
キッチンで飲み物を用意していた高校生の弟、宇多と鉢合わせる。
「お前も早いな。部活なかったのか?」
「そう。晩ごはん時間かかる? まだなら部屋でゲームして待つ」
「作れたら呼ぶから待っとけ」
「ほーい」
今日は父さんの帰りが遅いから俺が飯を作る日だった。
そういや調理科だったらケーキだけじゃなくて料理もできるのか……?
……って、何であいつのこと考えてんだ!?
考えない、考えない……
完成した夕食を食べながら宇多と話す。
「今週ってコラボカフェ?行くんだよな」
「そうだよ。なに? 予定でも入った?」
「いや、違うけど……」
玲依からのデート……の誘いを断ったのはこれが理由だった。
宇多がハマっている有名な対戦ゲーム。男女問わずに人気があるそのゲームのコラボカフェに宇多と行く予定だ。コラボ商品を食べたらランダムで貰える景品が欲しいらしい。
友達と行かないのか?って聞いたら由宇ほど甘いもの食べれる友達はいないから、と答えられた。メニューを見たら確かにスイーツ系が多かったけど、どんだけ食わせる気なんだ……?
とにかく、今の状態で2人きりで会うとか絶対嫌……というか気まずいしなに話していいかわからないから予定があってよかったと一安心していた。
次の日以降、玲依と芽依が入れ替わる日はなかった。うまく2人の予定が合わなかったんだろうと予想した。
芽依は明るくて元気で人当たりがいい性格らしい。講義のとき顔を合わせるたびに少しだけ会話をした。
「俺もうしばらく甘いの食べれねぇ……」
あっという間に週末になり、宇多とコラボカフェに行った。目当ての景品が貰えるまで吐く寸前まで食べさせられた。
「そう言ってるけど来週にはケーキ食べたりするだろ」
「はは、たぶんな」
そのとき、すぐ隣の店から出てきたのは見知った顔の2人だった。
「げっ……玲依!?」
「由宇!?」
俺と玲依はふたりして指をさして固まってしまった。
「尾瀬くん、偶然だね~!」
芽依が玲依の後ろからひょこっと顔を出す。
「えっこんなところで会えるとか運命……ってその隣の男、誰!?」
玲依は俺の隣の宇多を見て明らかに動揺している。あらぬ誤解をしているに違いない。
「まさか……かれし……!?」
「ちげーよ……弟の宇多だ。ほら挨拶……」
宇多は子ども扱いされて嫌だったのか少しむすっとしてこちらを睨んだ。
「言われなくてもするって。こんにちは」
宇多は双子に向かってぺこりと頭を下げた。
「おとうと……!?」
「尾瀬くん、弟くんいたんだ! わ~似てる~! こんにちは、私は髙月芽依。尾瀬くんと同じ学科なの。こっちは双子の玲依」
「由宇の弟、ということは俺の弟でもある……!」
「うわ、なんかブツブツ言ってる。こわ」
「はじめまして、宇多くん。俺は由宇のこいび……」
「うっっわ!! おまえ!! 何言ってんだ!!」
宇多と玲依の間に入って玲依の口を間一髪、手でふさいだ。こいつ、絶対恋人って言う気だったな!?
「積極的だね、由宇……」
「ちがう!!」
宇多は無言で興味なさそうに俺と顔を赤らめる玲依を見比べている。
どうしようもない空気が流れたそのとき、わざとらしく芽依が声をあげた。
「ああ~っと! そういえばこれから友達と約束あるんだったぁ~! 尾瀬くん、宇多くん、それじゃ! 玲依!今日の夜ごはんはハンバーグがいいな! よろしく!」
「えっ……!?」
芽依は笑顔で手を振って人混みに消えた。
あまりにも一瞬の出来事で何が起こったのかさっぱりだ。
玲依は片われの言いたいことがわかったのか、親指を立てて見送っていた。
この双子、きっとよからぬことを考えている……
だんだんとそんな思いがこみ上げてきたとき、芽依を見送った玲依がこちらに問いかけた。
「2人とも、このあとの予定は?」
「終わったから帰るとこだけど……」
「そっか」
しまった、こいつの狙いは……!!
「芽依がいなくなって、俺このあと暇なんだ。よかったら由宇の家にお邪魔したいなあ……?」
やっぱそうか!? そうくると思ったよ!!
こいつと部屋で2人きりになったら何されるかわからない……! 家にいれるのは何としてでも拒否しないと……!!
「俺の部屋片付いてないから無理。帰れ」
「別に気にしないのに……」
目に見えてしゅんとするな! 俺が悪いこと言ったみたいな気持ちになるだろ!
「家ぐらいいれてあげれば? 由宇が世話になってる人なら俺はいいけど」
「え、宇多!? いやっ……世話になってるわけじゃ……」
おい弟よ!! 俺はこいつに狙われてんだぞ!?
「俺、由宇の家行きたいなあ~?」
「うっ……」
宇多と玲依の視線が突き刺さった。
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