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第5話
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この気持ちは一体何なのだろう。苛立ちか、それとも哀れみか。複雑な心の内でひとつだけ明瞭にわかるのは、無防備に私の前で横たわる彼への劣情だ。
ベッドの上の正体をなくした彼の姿。部屋の中にいくつかのダンボール箱があるのは彼女との新居へ引っ越す準備の途中なのだろう。しかし今の私には、それすらも腹ただしく感じる。
彼女の裏切りを知らない彼は目を閉じたまま覚束無い手つきでネクタイを外そうとしていた。私がそれを手伝うと彼は深く眠りに落ちてしまった。シャツのボタンも全て外し、ベルトを引き抜いてスラックスに手をかけたとき、猛烈に彼を欲する熱が体を駆け巡った。
「……彼女は君にふさわしくない」
掠れた呟きが静かな部屋にやけに大きく響いた。浮かされる熱に後押しされて彼のスラックスをくつろげ、ボクサーパンツに包まれていた彼自身を引き出した。半勃ちの性器に顔を近づけ、下生えから立ち昇る彼の体臭を深く吸い込む。その香りがジンジンと脳を痺れさせた。
「私なら君を裏切ったりしない……」
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