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第4話 晴空①

 俺の双子の弟、凪は生まれつき病気がちだった。一緒に遊びたくても凪は熱を出して寝込んでる時が多かった。熱を出しやすい子供だったんだ。 「風邪が移るから晴空は向こうで遊んでて」母さんからはよくそう言われた。 「ぼく、じょーぶに生まれたんでしょ?だから、だいじょーぶ!」 いっつも逆らって凪の隣に寝そべって、熱いおでこを触ってた。  最初は引き剥がそうとした親達も、俺が凪からの風邪箘をもらって寝込むなんて事なかったから、隣にいても何も言わなくなった。  一人で遊んだってつまらなかったし、友達と遊んでたって凪が気になったし、なにより、発熱でボーっとする中たまに目を開けて俺を見ては安心して笑う凪が可愛かったから。  同じ顔に向かって可愛いなんて変かもしれないけれど、好きなぬいぐるみが可愛いっていう気持ちと同じように、俺はずっと凪は可愛いとしか思えなかった。同じ顔なのになんでだろう。同じに笑ってるはずなのに、凪だと優しく見える。一卵性双生児だから同じ顔のはずなのに。可愛い動物を見たって、この子可愛いわねって親が話してるアイドルを見たって、凪以上に可愛いって思える事はなかった。  小学校にあがり、双子なはずの俺たちは完全に見分けがつくようになっていた。髪は短くないとうっとうしくて、すぐ切ってと母親に短くしてもらうのが常だった俺。  対して、凪は長めが好きなようで、いつだったか「晴空とお揃いに切ろうか?」って母さんが冗談混じりに言った言葉を酷く怖がった。 「これがないとダメなの」 か細くそう言った声に、凪にとって髪は大事なものなんだって分かった。  凪の事も凪の髪も俺が守ってやる。  俺達の小学校は一学年一クラスしかない小さな小学校だった。凪と同じクラスでずっと一緒にいられる。俺が守るんだ。そのためにはケンカも強くなきゃならない。みんなが憧れるような存在になれば弟の凪も虐められない。  元々の運動神経も手伝って、外遊びが得意な俺はどんどん体育で活躍するようになった。凪を楽しませるために、積極的にお笑いの人の真似をした。結果、俺の周りには友達が集まってきたし、その友達は凪にも親切に見えた。

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