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第10話 『視える』ってこと

 凪は、自分が口下手だから、病弱で休みがちだから、暗いから、多分こんな理由で自分には友達と呼べる友達がいないと思っていた。   それは少し違う。同級生は、凪を怖れていたんだ。あれは、小学一年生。まだ入学したばかりで、先生も一緒になって遊んだり、クラスの雰囲気を作ろうとしていた頃だった。 「ウサギさん死んじゃったんだね、可哀想」 晴れ渡る空の下の校庭で、先生も交えて『だるまさんが転んだ』をしてたんだ。先生が最初の鬼。動いてしまって呼ばれる子供。まだ一年生になったばかりで、先生が名前を間違えて呼んでも、楽しそうな笑い声が起きた。 「みきちゃん動いた!」 「先生、そっちはななちゃん、みきは私だよ~」 女の子達は間違える先生にけらけら笑い、男の子はどれだけ面白いポーズで止まってられるかに夢中になってた。遊びを通じて先生と子供の距離は近くなってたんだ。みきちゃんが動いてしまって、その後に凪が動いて呼ばれた。みきちゃんと凪の繋がった小指。みきちゃんの顔をじっと見た凪が言ったんだ。 「ウサギさん死んじゃったんだね、可哀想」 「えっ?」 「あっ、おばぁちゃんも死んじゃったばっかりなんだね。ウサギさん、向こうでおばぁちゃんに会えるよ」 凪の目は目の前のみきちゃんの少し後ろを見ていた。 「ねぇ…。何言ってるの?ウサギのミミちゃん死んでないよ?今日の朝だって、ご飯食べてたもん」 「じゃぁ、もうすぐなのかなぁ。みきちゃんの後ろに来てるよ」 「なんでそんな怖いこと言うの…」 しゃがみこんでシクシク泣き出したみきちゃん。凪は追い打ちをかけるかのように。 「なんで怖がるの?自分のペットなのに」  楽しかった『だるまさんが転んだ』はそこでおしまい。みきちゃんの周りに友達と先生が集まって慰めていた。凪はなんでそんなに騒いでるのか分からないというように、無表情でその様子を見ていた。先生が注意しても何も反応もなく、みきちゃんの友達が話しかけても、ずっとみきちゃんの後ろを見ていた。  後日聞いた所によると、その日みきちゃんが自宅に帰った夜、ウサギのみみちゃんは天国に旅立ったらしい。みきちゃんはその日二回目の大泣きをし、翌日ウサギのような真っ赤な目をして学校へ登校してきた。それ以来、凪は少し変わってる、子供ながらに怖い存在だとクラスメイトに思われているようだった。

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