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第11話 夢

 夢を見た。  僕が昔、みんなが見えてる以外の何かが見えてた頃の夢。それから、先月晴空が看病してくれた時の幸せな記憶の夢。  夢の中の晴空は、身体を拭いてくれるだけでなく、拭いた後に僕の身体全体を触りだして撫で回して、あちこち感触を確かめたら納得して、キスをしてくれた。あの時と同じ「凪の肌は白くてキレイだな」って言ってくれた。キスをしたら堪らない気分になってきて、もっとしてほしくて、お兄ちゃんだからダメなんだよって頭で分かっても「晴空、もっと…」「何?」「キス、して、もっと」ってねだってる自分がいた。 「凪は案外エッチだな」 「嫌いになる?」 「嫌いになんて、なるわけないじゃん。むしろ、もっと好きになる」 夢だから自分の深層心理が産み出した、願望だらけの展開。自分が実は晴空の事を兄として見てるわけじゃなく、こういう、恋愛関係になりたいって意識の底では考えてる。  分かってた。気づかないフリをしてきた。 夢に見てしまったら認めるしかなかった。  だって、目覚めた時下着が濡れていて、初めての夢精をしたことに気づいてしまったから。  こっそり早く起きて下着を洗いながら、誰も起きてこないように祈った。晴空本人になんてもちろん知られたくない。親?親に見つかるのも恥ずかしい。そぉっと水を最小限細く出しながらも、手早く洗うという難しい所行。ひっそり静まった朝のキレイな空気の中、ベタついた液体と自分の心だけが汚かった。  その夢の後から、小さな頃に見えてた色々な物がまた見え始めたんだ。と、同時に、あの人が現れた。

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