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第13話 両親の秘密

 家族と貴嶺さんの5人で和室のローテーブルの周りに座る。僕はなるべく晴空に近づいて座った。いつでも触れるくらい近く。なんとなく、守らなきゃって気がしたから。 「さて。役者は揃ったようだから話始めさせてもらうな。単刀直入に訊く。どっちが視える方だ?」 「貴嶺さん、私たちは実家とは縁を切って静かに暮らしてるのでその話は……」 「劣性は黙っときな。縁を切った?切ったと思ってるのは自分たちだけだろ。逃げ出しただけなんだから。劣性の従兄弟同士でさ」 「貴嶺さん!」 「子どもたちは知らないわけ?お父さんとお母さんは元々従兄妹同士なんですよ、従兄妹同士で島から逃げ出して子供拵えたんですよって」  父と母が従兄妹…。初めて聞く話だった。 「従兄妹だから何だって言うんだ?結婚できるから結婚したんだろ?」 晴空はすぐ適応したらしい。僕は…僕は、自分がどう感じたのか分からない。 「問題はそこじゃなくてさ、劣性同士の間に出来た双子の子ども。どちらか逸材だろ?どっちだ?どっちが視えてる?」 「いつざい?そんな言葉は聞いた事はない。俺と凪はただの一卵性の双子だ」 「お前ら本当に親から何にも聞いてないんだな。なんで親戚がいないのかって疑問にも思わなかったのかよ」 「それは…考えたことはあったけど、一度聞いた時にお母さんが困った顔をしてたから、これは聞かなくて良い事なんだって思ってた」 「はっ。親思いなんだな」 貴嶺はバカにするかのように一瞬だけ嗤った。 「じゃぁ、もう一度聞き方を変える。どちらが、人以外の何かが視える方だ?」 「貴嶺さん!うちの子達は、劣性の私達から産まれたせいか二人とも何も見えたことがないんです。親に隠してる様子もありませんし、小さい頃も…」 「嘘だな。この家にそこそこの力をもつ者がいるって、あのばぁさんが言ったんだ。近江家は力を持ったものも持たないものも、家からは逃れられないんだよ。あのばぁさんには分かっちまうんだからな」 「力を持っていたとしても、その力は表面に出てないようです!お願いですから、私達家族の事は放っておいて下さい。あそこから離れて静かに暮らしているだけなんです」 「だからさ。それが気にいらねんだよ。誰も家から逃れられないのに、自分たちだけトンズラこいたってのがよ。いいぜ、逸材だけ渡せば、残りの三人は家族仲良くここで今まで通り暮らしなよ」 「本当に力はないんです。お願いですから1人も連れていかないで下さい、静かに平和に、邪魔はしませんから、お願いですから」  父と母が必死で今の生活を守りたいのが伝わってきた。父は仕事で忙しく会えるのは日曜くらい、平日は僕たちよりも早く起きて仕事に行き、帰りも僕たちが寝た後が多い。疲れた顔をしてても、都合が良い時分にキャッチボールをしてくれた。誕生日はどうにかみんなで夕飯を食べようと、早く帰ってきてくれた。  父も母も大好きだった。その父も母も生家の事をだされ困っている。家族には困らないで笑っていてほしい。あいつが邪魔なんだ。 「…めて、もう、やめて!」  白く温かいものに包まれた感じがした後、貴嶺さんは勢いよく後ろの壁に叩きつけられていた。 「いって~、覚醒してるし力強いじゃんかよ。一先ず今日は引く。双子の大人しい方、凪だったな。また来るからな」  何が起こったのか起こしたのか分からないままに、僕は気を失った。

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