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第14話 覚醒

 目が覚めたらいつもの自室の天井が見えた。自室のベッドの上。  ゆっくり右手を上にあげると、その腕はパジャマを着ていた。この右手…。昨日何かを出した感覚はこの右手?まだ何となく右掌を包むようなモヤがかかっているような、温かいような、不思議な感覚だ。  身体全身も心なしか熱を帯びている。  そんな中一番暖かい場所、左手。  繋いだ覚えのあるその手は晴空の手だった。僕の手を握って、小さく丸まって隣に寝ている。晴空も、怖かったんだろうな。少し汗をかいて張り付いてる前髪を、おでこからどかして髪全体を撫でてみた。 「晴空。晴空起きて。ずっとここで寝てたの?そんな隙間に小さくなって寝てたら体が痛くなりそうだよ」 「ん…。はよ。だってさ、凪の事掴んでないと、どこか行っちゃう気がしたんだ。力の事も黙ってたみたいだしさ…」 僕が隠していたと思い込んでる晴空は完全に拗ねた顔をして、目線を合わせようとしない。 「晴空…僕はどこにも行かないし、自分にあんな力が出せるなんて思ってもいなかった。小さい頃少し不思議なものが見えるだけ。それだけだったはずなんだ」 「俺に隠してたわけじゃないのか?」 目を合わせてくれた。 「隠し事なんて、してないよ。昨日急に出てきたこの力?のせいで正直一番戸惑ってるの僕だと思うし」  隠し事してないは嘘。晴空に抱いてる気持ちは言わないし言えない。言ってしまって反応を見てみたいと思う日もあるけれど。  左手を掴んでいる晴空の力が強まる。 「あいつ…また来るのかな……。来そうだよな、凪を連れに…」 「どうだろう。来ないでほしいな。僕らの親戚だとしても良い人じゃなさそうだし」 「母さんも父さんも困ってた。なんか色々と、初めて聞く話で、頭が混乱してる」 握ったままの手に力を入れてきた晴空が、僕のことを離したくないって言ってるみたいで嬉しくなる。 「少し、、身体でも動かしてきたら頭もスッキリしていいじゃない?」 「そうだな…。そうだよな、ちょっと走ってくるけど、凪は出掛けないで家で待ってろよ」  さらに握ってる手に力をこめて、真剣な顔でこちらを見る晴空は、昨日より少し大人になったように見えた。同じはずの顔なのに不思議だな。ドキっとするなんて。  僕の感情のが不思議で不埒なんだろうな。

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