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第34話 光る目

 教室にカバンだけ取りに寄って、永遠さんのアパートに向かった。 「帰るのかよ」 「ヤりすぎで疲れてんだよ。代返出来るのあったらよろしくな」 男子は下ネタにゲラゲラ笑い、女子はひいてた。どうでもいい。  学校から永遠さんのとこまでは歩いて30分。疲れてる体に30分歩きってのは長かったけれど、バスを使うのも何だかな…。  こんな昼間に来るのは初めてだ。昼間は大学に行ってると言っていた永遠さんは当然だが留守で、鍵ももらってない、どこかで暇潰しする程の体力も残っていない。仕方なく永遠さんちの玄関の前に座り込んで待つことにした。  まだ季節で言えば夏とはいえ、コンクリートの床にそのまま座るとケツが痛いしじわじわ冷えてくるなと思った。  待つのは平気。凪のこと何年も探してはいるけど、待ってもいるから。夜には帰ってくるだろう永遠さんを待つなんて、大したことじゃない。  待ってる間に居眠りをしていたらしい。「晴空か?」と言う永遠さんの声で目が覚めた。 「どうした?」 急に来てた俺に優しく訊いてくれる。それだけで来て良かったという気持ちになる。 「とりあえず中入りな。ケツ痛いだろ」    疲れてる俺は立ちあがっただけでよろけてしまい、自分より少しだけ背の低い永遠さんに肩を借りる羽目になってしまった。  勝手知ったるアパートに入りこみ、ローテーブルの前に座り、話し出す。 「永遠さん、なんか俺最近変なんだ。異常に疲れるんだよ。永遠さんとヤってる時には平気なんだけど、それ以外疲れて仕方がない。病気なのかな…」 「へぇ…僕とヤってる時は平気なんだ」 「嬉しそうに笑わないでよ。本当におかしいなって悩んでるんだから」 「待ってろ。食べれば少しは元気出るだろ」  台所に立つ永遠さん。食べてもその時だけなんだよな…。信じてくれないかな。自分でも信じられなくてまだ半信半疑くらいだから他人が信じないのは無理ないよな。病院とか行くレベルなのか、これは。  キャベツをざくざく切る音がする。キャベツと肉でも炒めてくれんのかな。好き嫌いないから口に入れば何でもいいんだけど。 「っい、った……」  永遠さんが指を切ったらしい。指にぷくっと血が出てきてるのだけが離れてるはずなのに大きく見えた。引き寄せられるように近づく。何の躊躇いもなく血が出た指を咥えると『これだ』という気がした。昔舐めた凪の血だ。舐めてはなくなり、またぶくっと出てくる。夢中で血が出るように吸い込んだ。 「いいよ。好きなだけ舐めな。…………………から」 必死で血を啜る俺の頭を永遠さんは撫でてくれてた。  永遠さんの目が光っていた事を、晴空は知らない。

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