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第35話 豹変

 あれ以来永遠さんの血を啜るのが習慣のようになってしまった。永遠さんの血の中に感じる凪の血。勘違いしてるだけかもしれないけれど、これは凪の血。幼い頃擦りむいた凪を思い出す。  みきには「お前の血は違うから付き合えない」と伝えた。  「血?なにそれ…おかしいんじゃない?晴空どうしたの…」 どうしたのと言われても、違うものは違うんだ。  付き合えないから、空き教室で強姦された犯されたって訴えてもいいと言ったら、あの時のは合意だったと言い張った。  自分が犯されたとか振られたとか言うのが嫌なんだろう。案外プライドの高い女なのかもしれない。もう好きじゃないからと去りながら呟いていったけど、元々みきの事なんてどうでもいい俺は傷つかなかったし、あっ、そう。別に何でもいい、くらいの気持ちだった。  血を煤ってる時は満ち足りた気持ち。セックスをしてる時も気持ちがいい。食べてる時も回復してる気がする。  なのに疲れやすさは一層酷くなっていくばかりだった。  今日も永遠さんのアパートで一発終わってから、横になったまま話した。 「永遠さん、俺さぁ、もう寿命なのかもしれない。日に日に疲れてダメなんだ。急に年寄りになったのかもしれない。人より成長が早くて、外見年寄りになってたりしない?俺の見た目は変わってないの?俺が鏡で見えてる自分は高校生の俺なんだけど、他人から見てもそうなの?永遠さんからは老人に見えてたりしない?」 「いやだなぁ、晴空。僕が老人とするわけないじゃん」 「でも…本当に体がおかしいんだ」 「永遠さん?」  永遠さんは下を向いて肩を震わせていた。俺が病気かもしれないって悲しんでくれてるのかもしれない。 「なぁ、永遠さん…」 震えてる肩に手を置くと、永遠さんは振り返ってこちらを見てくれた。が、その目は赤々と光っていた。 「はっ、お前本っ当に力ないのな!も~、ダメだ耐えらんねぇ、笑うの堪えられなかったぜ」  その口調も表情も今までの永遠さんではない。恐怖よりもわけがわからず声が出ない。 「お前が永遠さんって呼んで慕ってるこの器の中身はもういねぇんだよ。ばぁぁぁぁか」

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