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第37話 爆発
爆発?が、かなり近くで起きた気がする。階段を上にあがれば正解なのか、はたまた泉の方へ行けば正解なのか。自分の生にそこまでの執着はないものの、晴空と再会するまでは死ぬわけにいかない僕は、考え、どちらに向かって動きだすかを迷っていた。
バタバタと階段をかけおりてくる音がしたので、廊下に顔だけ出してみる。
「凪!!………凪いるか?!」
僕はあなたに待ってろと言われたからここで待ってるのに、何を当たり前な事を叫ぶのだろう。
「凪!上で爆発が起きた!この隙に泉から船着き場行くぞ!荷物あったら持てるだけ持て!無くても困らねぇ!」
無くても困らないと言うのなら、手ぶらの方が身動きとりやすいに決まってると思った。その上、ここに来てから外に荷物を持って出る必要もなかったので、リュックサックすら持っていない。
「手ぶらで行く」
貴嶺さんと泉のある方角に向かって走り出した。
普段運動とは縁が無くなっていた僕は少し走るだけで疲れる。出口の扉をくぐった時には少しだけ疲れていた。体力が若者じゃないなと呑気に考えられる自分に驚いたりもしていた。
「いず……みぃ……いるよな?」
(たかみね。もちろんいるよ)
(行くんだね。凪も連れていってしまうんだね。寂しくなるな)
「いずとみぃ?」
「泉に来れば会えるいずとみぃだ。俺が小さい頃つけたあだ名だから笑うじゃねぇよ」
(懐かしい呼び名)
(凪の力が暴走したんだね)
(ふふっ、楽しい事が起きる予感。当たったね)
(当たったね)
「僕の力…?」
「ちっ、やっばりか。お前無意識に使ったんだな。力の向かう先が図書室辺りだったから俺が置いといた爆弾が誘発されて爆発したんだ。いず、みぃ、ごめんな。お前ら着いてくるつもりなら、俺に憑いて一緒に来られるんだろ?行くか?」
(ありがとうたかみね)
(ありがとう)
(でも僕たちずっとここでみんなを見守ってきたからさ)
(ここの家がどうなるか見ていたいんだ)
「二人とも…消えない…よね?」
(消えないよ、凪)
(もっと凪の成長見たかったな。話したかったな)
「後で本土においでよ!」
(僕たち、海は越えられるかやってみた事ないんだ)
(島から出たら消える気がしてるし怖いんだ)
(ありがとう凪)
(また遊びに来てよ。今度は双子のお兄ちゃんも連れておいでよ)
(二人いたら凪のパパとママみたいだ)
(それも懐かしいな)
(さぁ、早く行って)
(屋敷が燃えてるよ)
(早く。僕たちは大丈夫)
(たかみね、凪、楽しかったよ、ありがとう)
(僕たちと話せる貴重な存在の子供達。ありがとう)
いずとみぃの光は泉の上空をくるくるくるくる回って喋らなくなった。僕たちが去るまでもう喋らないつもりなんだろう。ここに来てから一番話した存在たち。人間じゃなかろうと僕にとっては一番の友達だよ。
「ありがとう。いずとみぃ。絶対また会いに来るから!元気でいて!」
「またな!」
貴嶺さんが付けたあだ名で呼んで二人に手を振った。走りながら何度も振り向いた。いずとみぃは変わらず、泉の上を回っていた。僕が見えなくなる距離ギリギリで振り向いてもなお回って飛び続けていた。
寂しい気持ちもあって涙が出てきたけれど、僕は晴空を見つけなきゃならない。
視界を歪ませる涙は袖で拭って、走った。心臓がおかしくなりそうだったけど、大丈夫大丈夫と心臓に言い聞かせながら走った。
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