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第41話 晴空が見えた

 陸地が見えてきた。  本土に上がったらまずは実家に行って状況を訊く予定だ。久しぶりの実家。動揺しないように、出来るだけ心を落ち着けていかなきゃならな……、ん?これは、晴空の気配だ! 「貴嶺さん!晴空の気配だ!晴空が近くにいるんだ!」  外に出ていた貴嶺さんのところに飛び出しながら大声で叫んだ。 「早く!船のスピードあげてよ!早く!ほら、見晴し台に行く階段を上がっているよ!早く見晴し台に僕も上らなきゃ!」 自分が出せる限りのありったけの声で叫んだ。なのにこれ以上スピードは出せない、いっぱいいっぽいに飛ばして来たんだと、言われる。 「凪、晴空はどこだ?」 「ほら、あそこの高台になってる見晴し台の階段を上がってるとこだよ!」 「はっ?階段がそもそも俺には見えねーよ?」 「もうすぐ、もうすぐ、上りきって姿が見えるはず。…………と、晴空!止まって!そこから先は海だよ!止まって!貴嶺さん、晴空が走るのやめてくれない!止めて!晴空!あぁ!晴空ーーーーー!!!!!」 「凪!落ち着けよ!俺には晴空は見えなかった!お前が行ってる高台は分かったけど、あそこに人はいない!走ってる晴空はいないんだ!凪!」  頭を抱えて髪をかきむしって意味なく叫び続ける凪を止める為にキスをした。 「落ち着けって!」 むーー、むー、口の中で暴れてるところに舌も差し込み、呼吸を奪うように塞いでやる。じたばた暴れるのは止まったけれど、まだ口の中でモゴモゴ叫んでる。殺すつもりではなく、一端考えるのを放棄させたくて鼻も詰まんでやった。苦しい方にだけ集中しろ、お前が見たものを俺は見てない。今晴空はいなかった。  苦しくなってきた凪が静かになり、俺の舌を噛んだところでこちらも我にかえった。やり過ぎたか?大人しそうに見えてじゃじゃ馬なんだよ、お前もお前の力も。 「げほっ、はぁはぁ、はぁ、はぁ、見えなか…った?」 「あぁ。確実にお前が言った場所には誰もいなかった。晴空はいなかった。落ち着いたか?」 「だったら…あれは何。最後に凪って呼んでた気がした。あれは……。あっ、ごめんなさい、血が…」 手の甲で拭って大した事ないと言う。結構いてぇけど、口の中は治りやすいしな。  やっと陸地に、本土に着いた。 「貴嶺さん、僕の実家に行こう」 「元よりそのつもりだ。行くぞ」 船着き場から自宅まで小さい頃の足で確か15分。家まで走った。  船の中で、島で走った分の疲れは取れていたから、休まず走った。  あの角を曲がれば懐かしの我が家。  懐かしいお父さん、お母さん、僕の部屋、晴空の部屋。

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