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第15話

初めての女装。望んだものでもなく、興味も無かったのに異様に興奮してしまった自分がいた。 我に返ると恥ずかしい。 ヒロは全裸、俺はウィッグを付け、ブラと女性用のTバックのまま、ベッドに横たわり、余韻に浸っています。 「凄く気持ちよかったよ、瑞希」 「俺もだよ、ヒロ」 抱きしめてきたヒロは俺の目を見据えました。 「俺、なんて言葉使ったらいけないよ、瑞希。瑞希は女の子なんだから。私、とか、あたし、を使わなきゃ」 俺は無言になりました。 「わ、私...?」 「うん、あたし、でもいいけど...瑞希は私、の方がいいね」 そう言って微笑んできます。 お母さんの期待にも応えないといけない俺は俺、や、男言葉が出ないよう頑張ってはいますが、たまに出ます。 ヒロは怒ることなく、頭や髪を撫でながら気づかせ、注意するだけです。 ヒロはやっぱり優しいのです。 そんなある日、珍しく、ヒロの兄であり、同じゲイビ仲間だった、悠人とリビングで鉢合わせしました。 俺とヒロ、お母さんとで夕飯を食べていた時のこと。 「あれ?誰?この子」 悠人の夕飯の準備の為にお母さんが立ち上がります。 「...俺の彼女」 「お前に彼女!?」 どうやら、俺だと気づいていないらしい。 今日はお母さんが見立ててくれたワンピースにブラウンのストレートのウィッグです。 メイクは少しずつですが、覚えていきました。 ....俺だよ、と言っていいのかわからず、隣に座るヒロをチラ、と眺めます。 ヒロに表情はありませんが、俺の左の太ももに置いた手をギュッと握ってくれました。 俺の視線に気がついたのでしょう。 「はい、悠人」 悠人のぶんの食事がダイニングテーブルに置かれます。 「あー、腹減ったあ」 「引きこもってばかりね、どうしたの?悠人」 お母さんが悠人に心配そうに尋ねます。 「ゲーム!」 即答で悠人は答えました。 相変わらずだな....。 「ラスボスがなかなか手強くってさ、徹夜しちゃった、クマ出来てない?クマ」 見るところ、特に変わりはない。 「お姉さん、美人だね。ヒロの何処を好きになったの?きっかけは?」 もぐもぐとご飯食べながら悠人が尋ねてくる。 口を開いたらバレかねないような....。 「関係ないだろ」 ヒロが毅然と跳ねのけました。 「お前に聞いてない、お姉さんに聞いてんの」 「お食事中よ、静かになさい」 お母さんが静かに窘めてくれます。 「つまんないの」 悠人はふくれっ面。 食事を終えると悠人は再び、ゲームの続きしなきゃ、と部屋に戻りました。 ホッと一安心し、俺は後片付けの手伝いをし、先にお風呂を頂きました。

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