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第27話

俺とヒロ、お母さんとでお昼ご飯を済ませ、ヒロは自室で勉強中。 俺はお母さんのお気に入りだというお店のカステラとお茶を頂きながらお喋りです。 女物のスカートやらウィッグの長い髪で全身を飾ると、不思議と正座になります。 「あー、腹減ったあ」 いきなり、ヒロの兄、悠人が帰宅してきました。 「セフレの家に泊まったんだけど、お昼食べてなくてさあ、なにかない?」 悠人は、俺はもう引退しましたが、かつてのゲイビ仲間です。 「帰宅する前に連絡なさい。お昼済んじゃったのよ」 俺は慌てて、お母さんの耳元で、 「軽く私が作りますから、ゆっくりされてください」 お母さんは笑顔で、瑞希ちゃん、悪いわね、ありがとう、と呟きました。 チャーハンと餃子にサラダ、スープ。 トレイに乗せると部屋に入っていた悠人のドアをノックし、開けました。 相変わらず、大画面のテレビでゲームしています。 「ありがとう、そこ、置いといて」 そのまま、無言で立ち去るつもり、でしたが。 「お姉さん、ちょっと待って」 悠人の言葉に立ち止まり、振り返ります。 「お姉さんはゲームとか好き?」 声を出したらバレかねません。 俺が元ゲイビの仲間、瑞希だと。 「い、いえ、わかりません」 高い声を作り、悠人を見ないまま、答えました。 「あれ?」 俺に悠人が近づいてきた。 かと思えば、俺の顔を覗き込み、まじまじと見られる。 冷や汗がダラダラです。 「...何処かで見たような....」 「よ、よくある顔ですから」 声を作り、引き攣りながらも作り笑い。 「...メイク取ってみて」 「...それは困ります」 「どうして?」 「す、すっぴん、ブサイクなので」 まだ、悠人は食い下がりません。 まだ、まじまじと俺の顔を間近で見続けます。 「...もしかしてだけど、瑞希さん?」

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