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悪童の流儀(3)※

「念のため聞くが、男を受け入れるのは初めてだな?」  快楽を堪えることだけで手一杯になっていたレジナルドは、色々な意味でデリカシーに欠ける問い掛けに、皮肉を込めて吐き捨てた。 「君は慣れているみたいだな!」 「私が慣れていなかったら、君はこれから大惨事に遭うことになるぞ」  物騒な笑みとともに脅しつけて、ジェイムズは濡れた指でやわやわと蕾のまわりを揉み込む。潤いが足りなければ手の中の丸い先端を握り込むように揉み上げ、レジナルドの悲鳴と先走りを搾って、新たな雫を蕾に塗り足した。  やがて蕾は触れられることに慣れ、ひくひくと何かを期待するように蠢き始める。レジナルドの意志を裏切る体の反応を、ジェイムズは正確に受け取った。改めて蜜の源泉を苛めてはたっぷりと指を濡らし、慎重に蕾に差し入れる。  初めて受け入れるその衝撃と異物感は、凄まじかった。 「あああぁぁああっ!!」 「…妙なる調べだが…レジィ、今からそんな声を出していては、最後までもたないぞ」 「待て、ジェイムズ、抜けっ!指、抜いて……あぁっ」  そろそろと様子を窺うように内襞を撫でるのは、ジェイムズの指の腹。その指紋すら感じ取るように吸い付き食い締める肉筒、そこから拾い上げる凄絶な感覚を、嫌がるどころか擦り寄る体の反応に、レジナルドは打ちのめされた。自分を犯す指を待ちわびていたような体の声は、認めがたいものだったのだ。  せめてもっと痛みがあれば、ジェイムズが身勝手に自分の欲望だけを追っていれば、ここまで他愛なくほどけることはなかっただろう。しかしジェイムズは自分のことは後回しに、レジナルドの快楽に仕えることに専念している。――レジナルドが自ら堕ちるのを待ち構えているのだ。  ぬく、ぬく、と慎重でありながらもためらうことなく肉筒を掘り込まれ、目の前に火花が散る。 「や……め……ああっ……」 「ふ、文字通りの処女地だな…。『哀しみの聖母』に手を出す馬鹿はいまいとは思っていたが、『王の学徒』はみな腑抜けだったというわけだ」 「君以外は、みんな、紳士だっただけだろう……あうっ!」 「そんな憎まれ口が利けるとは、まだ余裕があるようだな――これではどうだ」    口の端を引き上げたジェイムズは、今にも弾けそうな性器の根元に眠る肉筒のしこりを、中から抉った。 「ひああぁぁっ!!」  生じた衝撃と快感は、これまでの比ではなかった。  吐精は何とか堪えたが、ぽたぽたと零れる先走りが止まらない。体の中のほんの小さな部分を押されただけなのに、脳天まで響くような悦楽が走り抜け、がくがくと腰から下が震えてしまう。  荒い呼吸を堪えながら、体の制御を取り戻そうと何度も唾を飲み込むレジナルドに、貴族の優雅さをかなぐり捨てた悪童は忌々しそうに舌打ちした。 「まだ()かないか…強情な」  最初の一撃はどうにか持ちこたえたが、レジナルドの肉筒の弱いところはジェイムズの手の内にある。そろそろ我慢するのもつらくなってきたジェイムズが、陥落を迫る次の一撃を手加減するはずもなかった。  初めて得る悦楽に震え、わずかにゆるんだ肉筒にもう一本指を差し入れると、レジナルドが抗議の声を上げる前に、揃えた指で弱いしこりをぐりぐりと容赦なく掘り抉った。 「やあっ、あああぁぁぁぁっ!!……あぁ、あぅ……ひぅっ!」  残酷な愛技に、堪えようのない嬌声が迸った。  ジェイムズの前で、これ以上の醜態を晒したくない一心で射精を堪えていたレジナルドは、神経に直接爪を立てるような鋭い刺激に、ひとたまりもなく弾けた。  長い間我慢していた分、そしてこれまで自らを慰めることを疎かにしていた分、射精はみっともなくだらだらと続いた。その様を背後のジェイムズに見られている。その事実が、レジナルドの羞恥心を煽り蝕んでいく。  しかし、悲嘆に暮れている暇はなかった。  それまで浅いところを嬲っていた冷酷な指は、レジナルドの吐き出した白濁をたっぷりまとうと、射精の衝撃に痺れたようになっている肉筒を再び拓き、奥へ奥へと進んでいく。二本の指は、時に中を拡げるように開閉し、絶頂の刺激で麻痺し痛みを感じることもできないでいる内襞をやすやすと手懐けると、三本に増えた。  そしてまた最初から、淫らな手順を繰り返される。浅いところで遊ぶ指先にいやらしいしこりを好き放題に抉られ、握り込まれた性器を手荒く扱かれ、時間を掛けて嬲られたレジナルドは、再びの吐精を強いられた。 「はっ、あああぁぁっ!!……はっ、は、はぁっ、……も、もう……やめ……許して……!」 「馬鹿を言うな、レジィ。まだ始まってもいないだろう?」  立て続けに押し付けられた強引な射精に怯えるように震え、力なく弛緩し哀願するレジナルドの耳を甘く噛みながら、ジェイムズが囁く。  その間も、息を整える間も与えられず、絶頂の余韻に震える肉筒の奥まで掘り込まれ、レジナルドの白濁を足しながら内襞を練り上げられる。零した体液だけで、蕾と肉筒をほぐされているのだ。  この行為を、レジナルドの体が望んだことだと教え込むために、ジェイムズは敢えてそうしていた。肉筒の奥からくちゅくちゅと淫らな水音が立つまで、レジナルドのそこは自身の白濁と先走りで潤わされた。 「レジィ、わかるか?君のここは、私に与えられた悦びで濡れていることを」 「違う、違うっ!」 「何が違うものか。ほら、もうこんなにほぐれて…中の赤い襞がすっかり濡れ濡れだ。見せてやれないのが残念だよ」 「そ、そんなことを言うなっ、恥知らず!」 「その恥知らずの指を、悦んでいるのは誰かな」 「ああぁっ」  意趣返しのように弱いしこりを抉られた。思い通りに甘い嬌声を上げさせたジェイムズの満足気なため息が聞こえ、レジナルドの擦り切れた羞恥心が、ギリギリと締め上げられ悲鳴を上げる。  打ちひしがれたレジナルドを構うことなく、執拗な前戯は延々と続いた。やがて、赤く色づき綻んだ蕾が自身の体液で濡れそぼち、三本の指を咥え込んでも嫌がるそぶりすら見せなくなった頃、レジナルドは息も絶え絶えに、嬲られる下肢を震わせるばかりになっていた。  その、すっかり脱力した様を見届けると、ジェイムズは静かに寝台を下り、台所からオリーブ油の小瓶を取って戻った。寝間着を脱ぎ捨てて全裸になり、天を衝くようにそそり勃った自身にたっぷりと油を塗りつけると、わずかに口を開いたレジナルドの蕾に瓶を宛がい、中身を注ぎ込んだ。 「ひっ!……な、なにっ……」 「無粋なものだが、これがないと君がつらい思いをするからな」  肉筒の中を舐めるように逆流する液体に、内襞は興味深そうに蠢き、腰を高く掲げられていることもあって、奥へ奥へ飲み込もうとする。それでも生理的にあり得ない感覚は到底心地よいとは思えず、レジナルドは無意識に腰を振って嫌がった。その艶景が、いよいよ我慢も限界となったジェイムズを、さらに煽るとも知らずに。  うつ伏せで拘束され、背後のジェイムズがどのような状態になっているのか見えないことは、レジナルドにとって幸いだったのかもしれない。その蕾に標的を定めるジェイムズの男根は、子供の腕ほどもある太さと長さを誇り、涎を垂らしながら反り返る様は、男の経験のないレジナルドにとって純粋に凶器だったからだ。  物理的に受け入れることは不可能に思える怒張は、割り広げられた尻肉の間で位置を定めると、無慈悲に侵入を開始した。

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