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悪童の流儀(4)※

「あ、あ、あ、あっ、あああああっ!!」  ずり、ずりり、とジェイムズが奥に進むたびに、押し出されるように悲鳴が迸った。流し込まれた潤滑油が、ぬちゅ、ぷちゅ、と卑猥な水音を立てながら、結合部の隙間から溢れてくる。  おかげで中が裂ける惨事は辛うじて免れているようだが、その濡れた場所に突き込まれているのは、焼けた棍棒なのだろうか。とても人の体とは思えない、太く、硬く、熱いものが、みしみしと体の中心を割り拡げるように中に進んでくる。 「息を詰めるな、レジィ。このままでは、つらいのは君だぞ」  衝撃に硬直する体をなだめるように、ジェイムズの手が力を失った性器に伸び、力づけるようにやわやわと擦り上げ始める。傍若無人な侵入者を拒む締め付けを跳ね返し、丸々とした亀頭が狭い蕾をぬるんとくぐり抜けると、その衝撃だけで背筋に戦慄が走った。 「ジェイムズ……もう、抜いて……これ、大き……もう無理だから……っ」 「レジィ、何が無理なものか。君の中は私に吸い付いているぞ」  慎重に、しかし容赦なく、ジェイムズの雄は奥へ奥へと肉筒を掘り抉る。張り出した先端の傘に敏感な内襞をこそげるように擦り上げられ、自分の体の中がジェイムズの形に変えられ支配されることに、レジナルドは本能的に怯えた。  咥え込んだ物のあまりの太さに、蕾は開ききり、じんじんと疼き熱を持っている。肉筒も限界まで引き伸ばされ、喘ぐように収縮しながらも、蠢く内襞でその硬さと熱さを味わっている。――そう、味わっている。  丁寧にほぐされ、中のしこりを抉られて二度も極めることを覚えた媚肉は、暴虐に怯えながらも、新たな快楽へ期待をにじませて従順にジェイムズの雄に絡み始めた。その証拠に、これほどの太さと長さに内襞を引き攣らせながらも、痛みは熱に変換され、レジナルドを煽り立てるばかりなのだ。  ただ犯され痛めつけられる強姦なら、いくらでもジェイムズを罵り軽蔑することができた。しかしジェイムズは、巧みな手練手管と熱い雄でレジナルドを籠絡し、共犯者に仕立て上げようとしている。  ジェイムズを糾弾する理由を奪う自らの体の淫らさに、レジナルドは絶望した。  懐く体の反応と、裏腹な悲痛な喘ぎに、屈服の気配を察したらしい。奥まで到達し、そこをぬちゅぬちゅと小刻みに捏ねながら、ジェイムズは耳元で囁いた。 「逃げないなら、腕を解いてやるが?」 「あっ……あ、なに、言って……あう!」    長大な男根を深々と埋め込まれ、これ以上はないほど繋がれている状態で、そんなことを聞いてくるジェイムズの狡猾さに腹が立つ。  いやらしい手つきで尻から内股を撫で回され、体の中を擦り上げ掻き回す動きも重なり、その両方を快感と受け取って甘い喘ぎを零している体を、認めないわけにはいかなかった。  これほどレジナルドを追い詰めておいて、その上でジェイムズは言質を取るつもりなのだ。  それでも歯を食いしばって問い掛けを無視していると、体内を行き来する雄の動きが大きくなった。小刻みな抽挿で奥を突いていた男根が、亀頭を残して引きずり出され、一気に奥まで貫く激しさで好き勝手に肉筒を貪り始めたのだ。 「やめ、ジェイムズ、やめっ、怖い……!」  絡む内襞を振り切るように退き、食い締める物を欲して切なく疼く空洞を埋めるように激しく剛直を打ちこまれる。肩から上で上半身を支え、重く突き上げてくる男の衝動をも受け止めさせられる姿勢のつらさに、レジナルドはとうとう半泣きで頷いた。 「こんなの、逃げられるわけない……っ」  震える声の恨み言に、満足気なため息とともにジェイムズの腕が手首の結び目に伸びた。紐をほどかれ、力なく敷布に落ちた腕は痺れて使い物にならない。  それでも何とか苦しい体勢から逃れようともがくレジナルドをよそに、ジェイムズはうつ伏せの胸元に手を回して器用にボタンを外すと、皺が寄ってしまったヴェストとシャツを剥ぎ取った。 「取りすました『聖母』の下に隠している顔を、見せてもらおうか」  低い囁きとともに、深々と繋がったまま、乱暴に体を返された。回転する怒張の太さと長さに、肉筒を余すところなく鋭く擦り上げられ、その摩擦熱に体の芯を炙られたレジナルドの喉が痛々しい悲鳴を搾り出す。 「ひいいぃぃぃっ!!」 「…ふっ、今のがそんなによかったか? 私で()けたじゃないか」  指摘され、のろのろと目をやると、腹の上に薄くなった精液が飛び散っているのが見えた。前を触れられることなく、中のしこりを集中的に責められることもなく、咥え込んだ男根の熱だけで極めてしまったのだ。  何度醜態を晒せば、この男は満足するのだろう。かつての同寮生で、ともに机を並べて学んだ、清しく懐かしい思い出を踏みにじるこの男は。  荒い息を吐きながら怨じるように見上げたジェイムズは、揶揄する口調に反し、目を細めて微笑んでいる。男らしい精悍な美貌は汗で濡れ、乱れた前髪が額に張り付いている。熱は下がったはずなのに熱に浮かされたような眼をして、舌舐めずりするようにレジナルドを見つめている。  優美な獣そのものの、その姿。  ――この男はまだ満足していない。  被食者の本能で、レジナルドは察した。  咄嗟に逃げを打とうとした体を、しかしジェイムズが許すはずもなかった。 「往生際が悪いぞ、レジィ。今度は私が楽しむ番だ」 「これ以上、何をっ……やめ、もう……あああっ」  牙を剥いた獣に、もうどんな言葉も届かない。  レジナルドの体がすっかり情交に馴染んだのをいいことに、ジェイムズは遠慮を捨ててそのしなやかな体を貪った。三度も極めさせられ力の抜けきった両脚を肩に掛けて、浮き上がった細腰に剛直を打ちつけ、かき回す。肌と肌がぶつかり合う音に合わせて、レジナルドの足先がふらふらと宙を舞う。  腕の中の獲物が奏でる喘ぎと悲鳴を、妙なる調べと耳を傾け酔い痴れ、ジェイムズはうっとりと更なる甘美を引き出そうと腰を打ちつける。 「レジィ、君はどこもかしこも、何て素晴らしい…!」 「戯言を、あぁっ……そこっ、もう、……あぁうっ」  自らの快楽を追うだけではなく、ジェイムズは新たな場所を開拓してレジナルドを啼かせた。仰向けにされ無防備に晒された胸に吸い付き、乳首を咥えて嬲る。残ったもう一つも指先で捕らえ、どちらも硬く立ち上がり愛撫を待ち望んで震えるようになるまで、延々と苛め抜いた。 「やめ、ジェイムズ、……も、やめ……!」 「やめろやめろと、これほど感じておいてそればかりか。レジィの体は正直なのに、口先だけは嘘つきだな」 「やっ、そこで、喋るなっ……」  乳首をしゃぶられたまま文句を言われ、立ち上る甘い疼きに非難の語尾が震える。びりびりと痺れる胸を這い回る、悪辣な舌を退けようとジェイムズの髪に指を差し入れても、頭を押しのける力がレジナルドには残っていない。  首筋から胸元まで、ジェイムズの唇が辿らないところはなかった。芸術作品を仕上げる執拗さでレジナルドの肌のあちこちに赤い痕を残し、その出来に満足すると、最早喘ぎを堪えることもできなくなっている唇を塞ぎ、口内を舐め回して唾液の交換を強いる。  自分の中の何が、ジェイムズをこれほど情熱的に駆り立てているのか、レジナルドには皆目見当もつかなかった。  ジェイムズが望めば、男も女も、最上の相手を手に入れられるだろうことは、容易く想像できた。突飛で非常識だが、それを補って余りある魅力を備えた男だ。  ウィズリー時代、級の上下を問わず何度か告白を受けたり、執拗な視線を感じることもあったが、同寮の彼からそういったものを感じたことはなかった。十年ぶりに再会して二ヵ月、ジェイムズの中に何が芽生えたというのだろう。  自分を組み敷き、余裕も優雅さもかなぐり捨てて腰を振る男。熱い雄でレジナルドの秘された欲望を暴き、翻弄する男。  強すぎる快楽で涙がにじむ視界の中、爛々と炯る二つの眼だけが鮮やかに、レジナルドを射抜いている。 「…君、何を、恐れてるんだ…?」  弾む息の合間、途切れ途切れに問い掛けた。  過ぎる快楽に浮かされながらも理知の光が灯るレジナルドの瞳に、何か感じるものがあったのか。  激しく穿つ腰の動きを一旦収め、身をかがめてくるジェイムズの体勢に、体内の怒張がさらに奥を圧迫する。苦しい息を吐きながら、顔を寄せるジェイムズの頬を、震える手で包んだ。  逸れることなく交わる視線、濡れた皮膚を通して伝わる熱。 「今の君、全然、らしくないよ……ああああっ!」 「君のせいだ!」  苛立ったように遮られた。どちゅん、と力強く奥を抉られ、もう何も言えなくなる。  これまでは手加減していたのだと言わんばかりの、容赦なく重く鋭い抽送に、寝台の上で体がずり上がる。それを肩を掴まれ押し止められ、衝撃のすべてを受け止めさせられ、レジナルドは悶絶した。  全神経を焼き切られ、三度も極めもう出ないと思っていた性器の先端から、ジェイムズの男根に押し出されるように少量の精が飛び散った。 「あ、あ、あ……っ」 「また達ったな…私も出すぞ…!」  目を見開いてひくひくと痙攣するばかりの哀れな体に休む間も与えず、ジェイムズは最後の抽送を繰り返す。すでに限界まで拡げられた肉筒を、さらにみちみちと押し拡げ奥へと伸びる雄の変貌に、レジナルドはこれから起こることを察し、萎えた腕で伸し掛かる男の胸を叩いた。 「いやだ、ジェイムズ、そこに、出すなっ……あああっ」 「無理な相談だ、レジィ、……くっ」  レジナルドの哀願を振り切り、深い場所で弾けた雄は、その威容に相応しい大量の精液をどくどくと放った。 「やあぁぁぁっ!……あ……ああ……」  長い放埓に、媚肉が喜ぶように蠢動する。内襞に跳ね返り溢れた夥しい白濁は、肉筒と怒張の隙間を縫うように逆流し、潤滑油と混じり合って、赤く腫れた蕾からぴゅっと飛び散った。敏感な内襞を熱い粘液にねろねろと舐められ、そのおぞましさすらも悦楽と捉える体の貪欲さに、レジナルドにはもうなす術もない。抗うまもなく、意識が遠くなっていく。  レジナルドは、そうして束の間気を失った。そうしなければ、立て続けに襲い来る異形の快楽に、神経がもたなかったのだ。  しかし、安息の時間は長くは続かなかった。

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