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悪童の流儀(5)※

「……あ……う……んんっ」  短い自失から覚めたレジナルドを待っていたのは、身を摺り寄せ、顔中に口づけの雨を降らせるジェイムズと、レジナルドの中に留まり変わらぬ威容を誇るその怒張だった。あれほど長い間レジナルドを嬲っておきながら、体内に大量に吐精しておきながら、その硬さも大きさもまったく損なわれていない。  いまだゆるやかな抽送を繰り返し、淫らな水音を立てながら肉筒の中を捏ね回しているジェイムズに、レジナルドは蒼白になった。 「…まさか、君、また…」 「君が私をこうさせているんだ、レジィ」  艶やかな眼差しでレジナルドを捉えながら、力の抜けたその手を捧げ持ち、ジェイムズはうっとりと口づける。 「これほど魅力的な姿をしていながら、見る者を切なくさせる微笑みで幻惑していながら、君がこれまで無事でいられたのは、『哀しみの聖母』のせいだ」 「何を、言って…」 「その唯一無二の微笑みで悪童をも受け止める君に、『館』の誰もが焦がれていた。だが、どれほど君が欲しくても、その微笑みを壊すような真似をしたら、もう二度と微笑んでもらえないという恐怖。そして君は誰にも公平にやさしいが、どこまでも公平だ。誰一人として君の特別にはならない。ウィズリーの腰抜けたちは、自ら聖母を遠ざけるくらいなら、恋情に蓋をして崇拝者でいることに甘んじたということだ」  同窓生をまとめて嘲るその言葉には、何故か自嘲の響きがある。体内の雄の律動が落ち着いていることに励まされ、体の奥からじわじわとにじみ出る快感に声が跳ねないように堪えながら、レジナルドは掠れた声で気になったことを訊ねた。 「君だって、昔は何もなかったし、問題児ではあったけれど、特に親しくもなかったじゃないか」 「あの頃は問題児でいることが楽しかったからな。それに監督生(プリフェクト)になった君に叱られている時だけは、君を独占できた。――でも今は違う。誰のものにもならない聖母なら、指を咥えて眺めているのも耐えられたかもしれないが、罪深い君はウィズリーという安全な鳥籠から放たれても、呑気に崇拝者を増やしているようだからな」 「ああっ!」  詰るように、くん、と奥を突き上げられた。  崇拝者などと身に覚えのない言い草に、不埒な悪戯を仕掛けるジェイムズを睨み上げる。長い情交に蕩けた眼差しでいくら睨まれようとジェイムズは喜ぶだけだと、レジナルドにわかるはずもない。  艶冶で可愛らしい抗議を受けて立つように、持ち上げた脚の内股を吸い上げて獲物を啼かせると、悪童はふてぶてしく嗤った。 「『哀しみの聖母』を失うことを恐れるのは、それを手に入れられない者だけだ。私はそんな間抜けになるつもりはない」 「…ジェイムズ…もう、本当に、無理だからな!」 「四回も()った君はそうだろう。だが私は一度しかレジィを味わっていない」  不穏な言葉と雄の律動に、レジナルドが顔色を変えてうろたえる。その様を目を細めて堪能しながら、ジェイムズは重要な取引を持ち掛けるように唆す。 「ただ、今日のこれが合意の、相愛の営みなら、この切なる欲望を抑え、愛する者をただ抱き締めて眠るのも(やぶさ)かではない」 「…これは強姦だ。愛などであるものか。悪童の、節操のない悪ふざけだ」  ゆるゆると揺さぶられ、嬌声が洩れそうになるのを堪えながら、レジナルドは冷静に断じた。  これが、愛であるはずがない。父母のそれとは異なるが、同じにおいのする爛熟した熱を内包するもの。それは、レジナルドには絶対に認められないものだ。  体は完全に籠絡され、持ち主の意志よりジェイムズの愛撫に従う情けない有り様だが、心の一欠片(ひとかけら)すらも、虚ろな愛を囁く男に与えてなるものか。  剛い眼差し、迷いのない言葉。  それは、レジナルドの芯の強さと誇り高さを愛するジェイムズを歓喜させ、その愛を求めて咆哮する獣を昏く追い詰めた。 「ならば悪童は悪童のやり方を貫くまで」  言うなり、ジェイムズはレジナルドの左脚を抱えたまま右脚を跨ぎ、下半身が交差する体位にレジナルドの体を捩じった。 「あああああぁぁっ!!」  収められた太く硬い肉棒のすべてで、再び弱い肉筒を捻じりながらしたたかに擦り上げられ、散々搾り取られとうに尽きたと思った悲鳴が迸った。  すぐに始まった抽送は、突き上げる角度と場所が変わり、慣れることを許さない新しい刺激が肌の上で弾けるようだ。さすがにもう射精には至らなかったが、はしたないそこは残念そうにゆるく勃ち上がってしまっている。  はぁはぁと短い息を繰り返し、強すぎる刺激をやり過ごそうと足掻くレジナ:ルドを嘲笑うかのように、凌辱者は追撃の手を強めた。抱えた左脚はそのままに、(むご)く広げられた脚の間ぎりぎりまで体を割り込ませ、肉筒の奥を目掛けて深く強く突き上げる。  うつ伏せで縛められて犯され、許されて仰向けになりジェイムズの姿を見ながら激しく抱かれている間も、惑乱したレジナルドは気づいていなかった。  ジェイムズがその雄々しく狂暴な男根を、根元までは獲物に突き立てていなかったことを。そして今、その全長がレジナルドの中に入りたがり、そのために奥の奥を目指して、最後の入口を探していることを。 「ジェイムズ、強いっ、奥、痛い……ああんっ!」 「何が痛いだ、そんなによがっておいて。そんなに(ここ)がいいか…?」 「違っ、あぅ、あ、あ、あああっ」  嫌がるのは口先だけ、身も世もなく啼き乱れる体はジェイムズの手に落ち、やがて最後の砦をも陥落させられることになる。  肉筒の最奥まで入り込み、くぽくぽと聞くに堪えない音を立てながら、何度も角度を変え突当りのその先を探っていた雄は、ようやくその入口を捉えた。強く押すと怯んだように口を開いたそこに、組み敷いた体がびくりと大きく震え、ひっと鋭く息を呑む気配がした。 (――ここ、だ)  レジナルドが気付いていたら怯えたであろう不穏な笑みで唇を歪め、ジェイムズはためらうことなく奥への入口に丸々とした亀頭を押し付け、勢いをつけて貫いた。  ――ぐぽっ  粘ついたいやらしい水音が腹の奥から響き、体内の何かが無理矢理拓かれる。自分の体に何が起こっているのかわからず、レジナルドは恐慌状態に陥った。 「……あ、ぁ、あ、あ……はっ……あ……っ!!」  想像するのも恐ろしいほど奥深いところを犯される衝撃に、最早悲鳴すらも零れない。  ざりっと下肢に下生えを押し付けられる感覚に、レジナルドはようやく、これまでジェイムズはその怒張のすべてを挿入していなかったことを知る。――あれほど深く支配し、レジナルドから悲鳴を搾り取っておきながら。  今、体内にすべて収まり脈動する雄は、その全長で肉筒の蠢動を味わい、レジナルドをさらに追い詰めようと涎を垂らしている。 「は、は、はっ……あ、あぁ……あぅ……」  凶悪なまでに長大な雄に、あまりにも深くみっちりと体内を満たされ、押し出されるように苦しい吐息が止まらない。  レジナルドは、杭を打たれ磔にされた生贄も同然だった。  肉筒の先にある、くねり曲がったもう一つの蕾は、ジェイムズの亀頭に貫かれ、その奥地をも支配されてしまっている。奥襞は無慈悲な侵入者に媚びるように吸いつき、鈍い痛みにも似た快感を拾い上げて、レジナルドを声もなく啼かせた。  ジェイムズが試すように引き抜くと、閉じた弁のような蕾がくぽんと(めく)れ、そのびりびりと痺れる強烈な感覚に、レジナルドの体は痙攣するように跳ねた。その様に満足し、さらに楽しむように、雄が奥の抽送を開始する。 「やっ……ジェイムズ、……そこ……だめっ……うごか、ないでっ……ひぁ、んうっ!」 「君も愚かな男だな。強姦などと挑発するから、初めてなのにこんな奥まで犯される羽目になる」  汗を滴らせながら、ジェイムズは奥の蕾を突いては引くのをやめない。時に強く、奥のその奥まで突き入れて、雄の威容を知らしめるように、レジナルドの臍のあたりをいやらしい手つきで揉み回す。散らされた二つ目の処女地を中と外から同時に嬲られ、レジナルドは身悶えすらもできず嗄れた喉を震わせて絶叫した。  「あああああああっ!ああ、ああっ、ああああっ!!」  陸に打ち上げられた瀕死の魚のように、はくはくと浅い呼吸を繰り返すのが精一杯のレジナルドに、ジェイムズが悪魔のように囁く。 「処女喪失で結腸まで犯されて、これほどよがるとは。真面目な監督生の顔の下に、こんな淫乱な顔を隠していたのか」  体だけではなく、露悪的な(ひど)い言葉で心も嬲られる。あまりのつらさに涙が溢れた。言い返したいが、己の痴態は事実なだけに言葉が出ない。それに、反論する力すらも残っていない。 「どうしてこんな目に遭うのかわからない、とでも言いたげな顔だな。君が、私の愛から目を背けてきた報いだ」 「あ、い……?」 「君が認めるまで、何度だって言ってやる。――愛している、レジィ。君だけだ、わたしをこれほど駆り立てるのは」  奥の蕾を剛直で拓かれながら、無理な姿勢で唇を重ねられ、厚い舌に喉奥までも犯される。荒い呼吸のせいで乾いた口内を潤すようにたっぷりと唾液を与えられ、喘ぎとともに飲み込んだ。  その間も、奥の奥を責め抜く雄の動きは止まらない。がくがくと断続的に震える腰を止めることもできず、口を塞がれているせいで、呻くかわりに甘く鼻を鳴らしてしまう。 「……ふっ、んぅ、……う、うぅん、くぅんっ!」 「…少し奥で遊んでやっただけで、これほど駄目になってしまうとは。ここに出されたら、君はどうなってしまうのだろうな、レジィ?」  唇を離し、淫靡に舌を閃かせ二人の唾液に濡れたレジナルドのそれを舐めながら、ジェイムズが悪辣な口調で唆す。半ば朦朧としていた意識を引き戻され、囁かれた言葉に、レジナルドは震え上がった。 「やっ!おく、や……ださ、ないで……おねがい…!」 「愛する者の可愛いお願いは聞いてやりたいが、これは強姦だからな…。おねだりを叶えるのは次の機会にしよう。――愛しているよ、レジィ。君は私のものだ…っ!」  雄が再び、解放を求めて(みなぎ)り始めた。  凶悪な怒張を亀頭が抜ける寸前まで引きずり出し、勢いをつけて一気に肉筒を穿つ。わななく最奥の内襞を腰を回して突き捏ね、その奥地の入口に狙いを定めると、しとどに濡れた亀頭をぬちゅりと突き刺す。ぐぽんぐぽんと容赦なく奥の蕾を出入りし、亀頭を舐める奥襞の熱い感触を味わいながら、さらに奥を目指した。  激しく腰を使いながら、ジェイムズは洗脳するように囁く。 「認めろ、私の愛を」 「あ、あ、……もう、ゆるし……く、うぅっ」 「君を愛する男を」 「……ひ、ひぅっ……おく、おくっ、こ、こわれっ……!」 「君はこんなに愛されていることを思い知れ、レジィ!」 「あああああぁっ……かはっ、はっ、は、……っ、……っ!!」  支配する雄の形を思い知らせるように、律動に合わせて熱い手の平でぐっぐっと腹を押され、凄まじい体感に声もなく痙攣するレジナルドの痴態を散々目で犯し堪能すると、ジェイムズは届く限りの奥を突き上げ、大量の精を噴き上げた。 「いやあああぁぁぁぁっ……!」  脆い奥襞を削るような勢いで熱い精液を叩きつけられ、そのおぞましい快感にうっすら吐き気すら感じながら、耐えきれずレジナルドは失神した。  ――愛している、私のレジィ。君だけだ。  ――私のものだ、誰にも渡さない。  腹の上に透明な淫液を撒き散らし、唇の上で呪詛のように繰り返されるジェイムズの囁きを、どこか遠くに聞きながら。

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