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ヒトとケモノ②
《side 鈴真》
郊外にある、鮮やかな新緑に彩られた静かな住宅街。その一角に建つ白い壁の屋敷で、派手な水音とともに紅茶の香りが広がった。
「朔月 、お前お茶もまともに淹れられないのか」
鈴真 は先程まで紅茶が入っていた外国製のティーカップを掲げ、目の前でびしょ濡れのままうずくまる朔月を冷めた目で見下ろした。
「……ごめんなさい、鈴真さま」
朔月は咄嗟に顔を庇った両腕を力なく下ろし、おずおずと鈴真を見上げている。それを見た鈴真は不愉快そうに眉根を寄せて、空になったティーカップをサイドテーブルに置いた。
「謝る時は申し訳ございませんでした、だろ? ちゃんと教えたはずだ」
全身紅茶まみれになった朔月ははっとしたように黒い瞳を瞬かせ、すぐに頭を下げた。
「申し訳ございませんでした」
普段はきっちりと整えられた黒髪が、水分を吸って重く垂れ下がっている。それを視界の端に捉えながらソファにふんぞり返った鈴真は、呆れたように溜息をついた。
「さっさと淹れ直して来いよ」
「はい」
鈴真が命じると、朔月は立ち上がってティーカップを手にとり、肩を落としながら部屋を出て行った。その後ろ姿を見送って、鈴真はまた嘆息した。
「全く……これだからケモノの血を引くやつは使えないんだ」
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