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振り返れば、そこに②
誰かが優しく手を握ってくれている。その温かい指を握り返すと、すぐそばで「鈴?」と名前を呼ばれる。
鈴真は閉じていた瞳を開けて、こちらを心配そうに見つめる朔月の姿を視界にとらえた。その顔を見た途端、安堵の溜息を漏らす。
「……朔月」
「よかった……目を開けてくれて」
朔月は鈴真の右手を両手で包み込んで、大切そうに額に当てた。
「……ごめん。僕のせいで、傷つけたね」
朔月の言葉は悲痛な響きを秘めていた。本当に反省しているようだ。
「もういい……別に気にしてない」
今回の件は朔月が悪いわけではないだろう。むしろ、朔月が来てくれなければ自分も夕桜もどうなっていたことか。
そこまで考えてから、鈴真はようやくここが保健室で、ふたりのほかに人の気配がしないことに気付く。
「あいつは……」
「君達を傷つけたやつらならもう心配ないよ。今頃退学処分にでもなってるんじゃない? 君のクラスメイトも無事。君ほど酷い怪我じゃなかったから、さっき友達が迎えに来て寮に戻ったよ」
「……そうか」
朔月の説明を聞き、とりあえず夕桜が無事だと知ってほっとした。迎えに来た友達というのは、おそらく灰牙のことだろう。
寝かされているベッドから起き上がろうとして、身体中に激痛が走り、鈴真は顔を歪ませた。
「駄目だよ、まだ寝てなくちゃ。君がうわ言で病院には行きたくないってわがままを言うから、ここで手当てをしてもらったんだ。あとで僕が寮まで運ぶから、今は安静にして」
……それは、また朔月がお姫様抱っこして自分を運ぶということだろうか。意識がない時ならともかく、はっきりと覚醒している今、朔月にお姫様抱っこされるのは抵抗がある。だが、この痛みでは歩けそうもないし、文句は言えなかった。
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