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変わりゆく想い②
しばらくして、落ち着いた鈴真を医者に診せたところ、満月症候群の症状が原因で鈴真の体調が悪くなったのではないかと診断された。
ヒトに欲情し、ヒトを誘ってしまうという症状が稀に見られるらしく、体調の悪化はその前触れだそうだ。
鈴真はどうやら自分が使用人の男にされたことを覚えていないらしく、朔月はそのことにほっとした。あんな記憶、ないに越したことはない。
鈴真に手を出した使用人は解雇された。かなり酷い怪我だったが、未成年に手を出したことを警察に言わない代わりに、朔月に怪我をさせられたことは黙っておくように、と養父が取引を持ちかけ、彼はそれに応じたらしい。
本来であれば満月の夜はヒトのそばにいないほうがいいのだが、朔月はどうしても鈴真のそばを離れようとしなかった。その結果、発作を起こした鈴真の身体を慰めるのは朔月の役目になり、鈴真はその度に朔月を拒絶したが、朔月は鈴真に触れたい衝動を抑えられなかった。
朔月にはこの衝動が鈴真の満月症候群の発作によるものだとは思えなかった。なぜなら、満月の夜以外の時も、日常的に鈴真に欲情するようになったからだ。あの日がきっかけになったのは確かだが、それでも自分の中に鈴真を求める醜い自分がいることを、認めざるを得なかった。
最初のうちはそんな自分を汚らわしいもののように思っていたが、こんなふうになるのは鈴真を愛しているからだ、人間として当然のことだと考えるようになった。
鈴真に触れたいという欲望は常に朔月の心をかき乱し、そのうち嫌がる鈴真に無理やり性的な接触をするようになった。鈴真は血の契約のせいなのか、嫌がりつつも本気で抵抗しようとはしない。そのことが余計に朔月の欲望をエスカレートさせた。
だが、ふたりが一線を越えることはなかった。朔月の中に、それだけはしてはいけないという理性の欠片みたいなものが残っていて、朔月はずっとそれを守るつもりでいた。
鈴真は次第に朔月に恐れを抱くようになった。普段は強気な鈴真だが、夜に朔月とふたりきりになるとこれから何をされるのかと怯える素振りを見せるようになっていった。朔月は鈴真にできる限り優しく接しようと心がけたが、それでも鈴真は朔月を拒み続ける。
朔月は段々と焦り始めた。鈴真を笑顔にしたいという当初の目的を思い出し、環境を変えれば何か変化が起きるかもしれないと考えて、鈴真を蒼華学園に通わせることを決意した。
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