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変わりゆく想い④

 翌朝、朔月は鈴真が自分の顔をじっと見ていることに気付き、閉じていた瞳を開けた。 「おはよう、鈴」  鈴真は朔月を見ていたことがバレて恥ずかしいのか、すぐに顔を背けた。そんな彼の背中をぎゅっと抱きしめると、意外にも鈴真は嫌がらなかった。 「今日は学校休みだし、一日中こうしてたいな」  まだ寝起きでぼんやりした頭でそう言うと、鈴真は突然朔月の腕の中から逃れようと抵抗し始めた。 「ふ、ふざけるな……! 僕はお前と違って忙しいんだ!」 「忙しいって、何するの?」 「勉強したいんだよ!」  それを聞いて、朔月は少し不機嫌になった。  学園に通うように言ったのは自分だが、もう一宮の両親はそばにいないのに、まだ勉強したいなどと言うとは……それも、自分といる時間よりも勉強のほうが大切だと言う。だから、つい言ってしまった。 「でも君達ケモノはあらゆる面でヒトより劣っているし、君ひとりでやるよりも僕が教えたほうが早いと思うんだけど」 「……っ、うるさい! そんなこと言われなくてもわかってる!」  鈴真は朔月から離れて布団を頭からかぶり、泣き出してしまった。  鈴真は朔月の前でよく泣くようになった。それは信頼されているようで良い傾向だと思うが、今のは失敗だった。  鈴真を傷つけたことを悟った朔月は、布団をめくって両腕で顔を隠す鈴真に謝罪した。 「泣かないで……意地悪言ってごめんね。僕は鈴の努力家なところ、昔から好きだよ」 「うるさい! お前だって結局僕を馬鹿にして楽しんでるんだろ! 僕に奴隷みたいに扱われたことを恨んで、復讐のためにわざわざ僕を従者にしたんだ……! それなのに、今更優しいふりなんかするな!」  鈴真は朔月を睨みながら叫んだ。  その時朔月は、初めて鈴真が自分をどう思っていたのか知って唖然とした。まさか、復讐のためにわざわざ鈴真を引き取って今まで世話を焼いてきたと思っていたのか。鈴真には、自分が恨んでいる相手を助けるために、毎回授業を放り出して駆けつけるような、そんな優しい人間に見えているというのか。  その時朔月の中に、怒りとも哀しみともつかない奇妙な感情が生まれた。気がつくと、朔月は鈴真に強引に口付けていた。鈴真はされるがままになっていた。 「僕は鈴が好きだよ。だから自分だけのものにしたくて、君を従者にしたんだ」 「……好き……?」 「そうだよ。だから大事にしたいし、めちゃくちゃにしてやりたい」  言いながら、朔月はやっと自分の気持ちに気付いた。自分の中にある鈴真を守りたいと願う気持ちも、鈴真への昏い欲望も、どちらも彼への愛情なのだと。同じ気持ちの側面でしかないのだと。

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