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手紙
その手紙が届くようになった時、朔月はまたか、と思った。
机の中に「お前の正体を知っている。お前のことを理解できるのは私だけだ。お前の周りにいる人間はお前には必要ない。だからさっさと離れろ」というような内容の手紙が毎日のように届くようになったのだ。
朔月は以前にも似たようなことを言ってきた生徒がいたことを思い出し、手紙を丸めてゴミ箱に捨てた。朔月が中学生の頃の話だ。朔月はどこにいても目立つので、そういった頭のおかしな信者につきまとわれやすかった。
このクラスにも、朔月の信奉者はいる。何かにつけて話しかけてきて、朔月のことを優秀だとかかっこいいとかとにかく持ち上げてくる。朔月はそんな彼らに素っ気なく接していたが、彼らの朔月への信仰心はおさまることはない。だが、彼らが手紙を書いたという証拠もないし、いちいち犯人探しをするのも面倒だった。だから放置していたのだが、今度は同じクラスの春音と冬音のもとにまで手紙が届いた。
そこには朔月に関する根も葉もない悪口が書かれていて、ここまでされたことがなかった朔月は驚いた。春音達は心配してくれていたが、朔月は「ほっとけばいいよ」と言った。こういうのは相手にするとつけ上がるのだ。そのうち向こうも飽きるだろうと、その時は思っていた。
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