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ペンダント②
「鈴はお母さん似だね」
朔月がそう言って嬉しそうに写真を覗き込むので、鈴真も自然と笑っていた。
「そうか? この……僕の父は、朔月に似てるな」
「一応僕も一宮の血を引いてるからね」
「僕は昔からお前の髪と瞳の色が羨ましかった。でも、今はこの色も嫌いじゃないと思える」
鈴真は自分の真っ白な髪を一房摘んでみる。少し前まで雨に濡れて湿っていたが、いつの間にか乾いていた。
「僕も、鈴の髪と瞳の色、すごく好きだ。初めて見た時は天使かと思ったよ」
「天使って……大袈裟だな……」
朔月が真面目にそんなことを言うので、可笑しくてくすくす笑う。
朔月とこんなふうにお互いの親や容姿の話をする日が来るとは思わなかった。その話題は鈴真にとっては決して触れられたくないことだったから。だけど、今となっては笑い話だ。朔月が笑い話に変えてくれた。
「鈴、お見合いのことだけど」
朔月が話題を変えたので、彼の顔を見る。朔月は申し訳なさそうに眉を下げて、言葉を探すようにゆっくりと話し出した。
「結婚はするつもりないよ。神牙の養父母を出し抜くために、彼らの言うことに従うふりをしていただけだ。養父母が犯罪に手を染めていたことを知って、彼らを追い詰めるために色々動いていたから、その間は鈴と連絡を取らなかった。でも、誤解させて本当にごめん」
朔月の言葉に嘘はないと、今の鈴真には心から信じることができた。ふたりはお互いを誤解して、ただすれ違っていただけだったのだろう。
「うん。でも犯罪に手を染めていたって、あの人達は……」
「ふたりは警察に引き渡した。もう僕らとは何の関係もない人間だよ。神牙家は僕のものになったし、鈴が心配することは何もない。これから何があっても、僕が鈴を守るから」
朔月はどうやらまだ自分ひとりで全て抱え込む気のようだ。
鈴真は朔月の頬を手のひらでぺちっと軽く叩き、目を瞠る彼に語りかけた。
「僕にもお前の心配ぐらいさせてくれ。これからふたりで生きていくんだから、ひとりで抱え込まないで僕にも荷物を分けて欲しい。僕も、お前を守れるようになりたいんだ」
まだ頼りない自分だけど、いつか必ず朔月の隣に立つのに相応しい人間になって、彼と同じものを見て同じものを背負いながら、並んで歩きたい。
それが今の鈴真の願い──いや、目標だ。改めてそう強く思った。
朔月はしばらく驚いていたようだが、やがてとろけるように甘く微笑んで鈴真を抱きしめた。
「嬉しい……ありがとう。鈴」
「……僕のほうこそ、ありがとう。これ、大切にする」
胸の上で光を反射するペンダントを握りしめ、鈴真はそっと目を閉じた。
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